2024年11月27日
「預金連動型住宅ローン」は東京スター銀行が日本で初めて導入したものです。東京スター銀行の預金連動型住宅ローンのサービスは2022年1月31日(月)で終了しており、現在では山陰合同銀行や、琉球銀行等一部の金融機関で取り扱っています。
預金連動型住宅ローンは東京スター銀行が最初に提供した商品で、住宅ローンの金額から預金部分を引いた金額部分にしか利息がかからない住宅ローンです。例えば、住宅ローンを3,000万円を借りても2,000万円を預金として預けている、2,000万円部分の金利が0%になって、1,000万円部分にかかる利息だけを支払うことになります。
※0%ではなく若干の金利がかかる預金連動型住宅ローンもあります。
※東京スター銀行のホームページより
一般的には「本人のお金」でなければ、住宅ローン残高を相殺する預金残高と見做されていませんでしたが、家族の預金についても預金残高に組み入れることができる商品が登場しています。他にも条件を満たせば家を担保に入れる必要がない(抵当権を設定する必要がない)ようになったり、利息部分がキャッシュバック方式の預金連動住宅ローンもあります。
本来、預金として預けられるお金があるなら住宅ローンを借りない(または借りる金額を小さくして)で家を買えば良いわけですが、預金連動型住宅ローンには条件を満たせる人にはいくつかのメリットがあります。
また、残念ながら預金連動型住宅ローンは適用される金利そのものは高いので目安として預金を住宅ローンの2/3以上用意できる人でなければメリットをあまり活かせません。その場合は、素直に少しでも金利の低い一般的な住宅ローンから選ぶようにしましょう。
何と言っても最大のメリットは、住宅ローン残高から預金残高を引いた部分にしか住宅ローンの利息がかかからず、0%に限りなく近い水準まで利息負担を減らせることです。なかには家族の預金も残高に組み入れられる代わりに金利は0%ではなく0%に近い水準にできる預金連動型住宅ローンもあります。
また、いったん利息を支払ってからキャッシュバックされるタイプの商品もあります。通常の住宅ローンの場合、どんなに低金利だとしてもトータルでは数百万円単位で利息を支払うことになりますので、預金残高があれば利息負担がをかなり抑えることができることは大きなメリットと言えるでしょう。
※金融機関によっては0%にはならない場合があります。
住宅ローンの借り入れがあると所得税・住民税の控除・還付を受けられます。現在の制度では、住宅購入から1年で最大40万円の控除を受けることができます。控除を受けられるのはマイホーム購入から10年間なので、最大で400万円の控除されることになっています。控除の金額は「年末の住宅ローン残高」で決定されます。
一般的に住宅ローンの総返済額を抑えるために重要になるが繰上返済です。繰上返済で住宅ローン残高を減らして総返済額を抑えていくのは王道なのですがデメリットもあります。繰上返済のデメリットの1つとして、繰上返済すると住宅ローン控除の金額が少なくなってしまうという点があります。
住宅ローンを契約する時に同時に加入するのが団体信用生命保険(団信)です。団信は「住宅ローン残高」が支払われる生命保険で、住宅ローン返済中に死亡したり高度障害状態になった時に住宅ローン残高分の保険金が支払われる仕組みです。実は預金連動型住宅ローンはこの団信の制度を有効に活用して生命保険代わりにすることができます。
ここでは2つのケースを比較してみましょう。
マイホームの価格 | 自己資金 | 住宅ローン借入額 |
6,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
6,000万円 | 0円 | 6,000万円(3,000万円は預金に) |
ここでマイホーム購入直後に死亡・高度障害になった場合で考えてみましょう。前者は3,000万円の保険金で3,000万円の住宅ローンが相殺されます。後者は6,000万円の保険金で6,000万円の住宅ローンが相殺されます。預金に残してあった3,000万円はそのまま残ります。
このケースでは、前者はマイホームだけが資産として残ります。後者はマイホームと3,000万円が資産として残ります。残された家族がゆとりある生活を過ごすことができるのは当然後者というわけです。
団信を生命保険代わりに考えるのは住宅ローンの王道であり、預金連動型住宅ローンに限定した話ではありませんが、預金連動型住宅ローンであれば、預金の3,000万円部分には利息はかかりませんのでこの仕組みを使いやすいというわけです。
預金連動型住宅ローンに連動させる預金は出し入れ自由です。つまり、お金が必要になった時に引き出して、余ってきたらまた預金に戻せば良いだけです。一方で、住宅ローンの自己資金として使ってしまったお金はそうはいきません。預金連動型住宅ローンは、「手元にお金を残していつでも使えるお金を残しながら住宅ローンの利息を少なくできる」という特徴があるのです。
手元に流動性を残せるのは、自営業や個人事業主や中小企業の経営者にとっては大きなメリットなのは言うまでもありません。
このような特殊な商品性なので預金連動型住宅ローンは普通の住宅ローンに比べて金利が高く設定されています。預金連動型住宅ローンの1番のデメリットは金利が高いこと。一般的な預金連動住宅ローンの場合3%程度の金利になると考えておきましょう。
仮に2/3程度は預金で相殺して金利0%にできたとしても、実質的には3,000万円を年1.0%で借りているのと利息負担はかわりません。ここだけを考えると素直に1%未満の金利を提供している住宅ローンを利用した方がお得です。前述のメリットを加味したとしても、かなり自己資金を用意できる人でないと預金連動型住宅ローンのメリットを最大化できないのが最大のデメリットです。
次に預金連動型住宅ローンを提供している主要銀行の金利や商品性について具体的に確認していきたいと思います。
※東京スター銀行の預金連動型住宅ローンは、2022年1月31日(月)で終了しました。
東京スター銀行は日本で初めて預金連動型住宅ローンの提供を開始した先駆者的存在です。商品性もかなり練りこまれていて適用される金利が低く預金連動型住宅ローンを検討するのであれば選択肢の1つに入れたい住宅ローンです。(適用される金利は0.75%~1.35%と幅がありますが、仮に1.35%としても預金連動住宅ローンの中ではかなりの低金利ですし、0.75%の最優遇金利が適用された場合破格の低金利と言えます。)
このように、東京スター銀行の預金連動型住宅ローン(スターワン住宅ローン)は、預金連動型住宅ローンの中ではかなり低金利となっていることが最大の特徴です。他の預金連動型住宅ローンが預金と同額分についても若干の利息支払いが発生するものが多い中で0%となっていますし、そもそもの基準金利もかなり低めに設定されています。
購入を考えている物件と同額以上の預金があれば、その預金を担保設定することで物件に抵当権を設定せずに住宅ローンを借り入れることもできます。
更に外貨普通預金も対象預金なので、外貨預金・外貨資産を保有している人は円に交換しなくても預金連動のメリットを受けられます。外貨預金で資産運用している人にとってその外貨を有効活用しながら円建ての不動産を手に入れることができる点も見逃せないポイントです。
また、保証料や一部繰上返済手数料がかからないという点も魅力です。預金連動型住宅ローンは繰上返済をする機会は少ないですが、この住宅ローンが役割を終える時(例えば、10年経過して住宅ローン控除の効果が無くなるときなど)に、繰上返済を行う場面は訪れることを考えると一部繰上返済手数料が無料になっていることは見逃せません。
次に東京スター銀行の預金連動型住宅ローンのメリットでもあり注意点でもある「メンテナンスパック」についてに解説しておきたいと思います。このメンテナンスパックは3種類用意され必ずどれかを契約しなければならずメンテナンスパックは年率で0.300%~0.702%相当の利用料金が発生します。
また、この利用料金の計算には預金連動は考慮されず住宅ローンの残高で計算されることを頭の中に入れておく必要があります。例えば、5000万円の住宅であれば12500円~29250円のメンテナンスパック利用料金の支払いが必要になることになります。
メンテナンスパックは松竹梅の3段階に分かれていますが、もっとも費用負担が少ないメンテナンスパック3には「団信」が含まれていませんので「メンテナンスパック1」を標準と考えましょう。このメンテナンスパック1のメリットと言えるのが通常の団体信用生命保険だけでなく、入院時に一時金10万円支払われると共に最大36か月まで毎月の住宅ローン返済額が保険金で支払われる入院保険が付帯している点です。将来の病気やケガによる入院に備えることができるのは1つのメリットです。
ちなみに、もっとも費用負担が高いメンテナンスパック2には「医師によりガンと診断された場合に住宅ローンの残高が0円になるガン保険」が付帯します。1億円の預金を預けて1億円のマイホームの住宅ローンを組んだ状態でガン検診などでガンと診断されたら、1億円のお金と1億円の不動産が手元に残ることになります。1億円支払って買ってしまっていたら1億円の不動産が残るだけなので雲泥の違いです。
更に視点を変えて実質的に1億円も一時金が受け取れるガン保険に加入することになると思えばそのメリットの大きさが理解できると思いますし、一般的なガン保険に加入し続ける意味がないんじゃないか、と思えるほどです。
※北日本銀行の預金連動型住宅ローンは終了しました。
岩手県を中心として営業している北日本銀行も預金連動住宅ローンを提供しています。2020年1月時点で、基準となる住宅ローンの金利は3.1%で、預金として預け入れている部分については円普通預金と同様に0.001%相当が適用されることになっています。この商品のメリットは5口座まで家族口座を登録できて、家族口座の預金の50%が連動する預金にカウントされることです。ご両親やご家族が多額の金融資産を保有しているようなご家庭で活躍できる可能性があります。
北日本銀行の預金連動型住宅ローン(新・家族愛)を利用するときに注意したいのは東京スター銀行と同様に「安心パック」と呼ばれるサービスを必ず利用しなければならない点です。東京スター銀行と同じく3種類用意されていますが、利用金額は年0.5%相当~となり、東京スター銀行よりも費用負担が大きいので注意しましょう。なぜか「がん保障特約」は必ず利用しなければならないことになっています。がん保障のメリットは前述したとおりですが、必須利用となっている分利用負担が大きくなっています。
山陰合同銀行の預金連動型住宅ローン「ごうぎん預金連動型住宅ローン」は、普通預金残高に応じて、支払ったローン利息をキャッシュバックします。手元の預金を残したまま、利息負担を軽減させたい方におすすめです。
一般の住宅ローンより金利を年0.2%上乗せしているため、普通預金の平均残高が一定額以上ある場合にメリットを享受できます。(預金が少ない場合は一般の住宅ローンの方が有利となります。)
金利タイプは、「2段階固定金利型」、「金利選択型」、「変動金利型」の3タイプから選べます。
通常の住宅ローンとは異なり、かなり特殊な住宅ローンと言える預金連動型住宅ローン。取扱う金融機関も限られているため、必ずメリット・デメリットを把握し、自身に適しているかを判断したうえで選択することをおすすめします。
最後に、結局どのような人におすすめかを最後にまとめておきたいと思います。以下のような人には預金連動型住宅ローンはおすすめできる住宅ローンです。(ネット銀行よりも実質的費用負担が低減できる条件にできるのであれば)
→ 預金を担保にすることで、無理なく低金利で融資を受けられるため安心です。手元資金も維持しやすいメリットがあります。
→資金を確保しながらマイホームを手に入れられるので、事業資金を圧迫せずに済みます。金利負担も抑えられます。
→預金を担保にすることで、資金の出し入れが自由でありながら、低金利の融資を受けることができます。
合わせて、預金連動住宅ローンをおすすめできない人の特徴もまとめていきます。
→預金連動住宅ローンは、預金残高に応じて金利が下がる仕組みのため、預金残高が少ない、または定期的に引き出してしまう人には恩恵が少なく、一般的な低金利の住宅ローンを選ぶ方が有利な場合があります。
→預金連動型では預金残高が担保として利用されるため、直接的な返済には使えません。
「繰り上げ返済を積極的に行いたい」と考えている人には、この仕組みが不便に感じられることがあります。
金融機関によって仕組みや条件が違いますので、複数の金融機関で比較・検討するようにしましょう。
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