公開日: 2026年8月30日

日本は災害大国と言われるとおり、地震・台風・大雨・洪水など、毎年のように全国のどこかで大きな自然災害が発生しています。マイホームを持つご家庭にとって、住宅ローンの返済中に被災してしまうことは、決して他人事ではない不安の一つです。
2026年(令和8年)も、7月の熊本地震や8月の記録的な大雨など、住まいと暮らしを脅かす災害が相次ぎました。東日本大震災・熊本地震(2016年)・平成30年7月豪雨・令和6年能登半島地震と、大きな災害のたびに「家は被害を受けたのに、ローンだけが残ってしまった」というご家庭が生まれています。
この記事でお伝えしたいのは、自然災害の影響で住宅ローンなどの返済が難しくなった人を支援する「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(自然災害債務整理ガイドライン)という制度が運用されている、という点です。
このガイドラインは、自然災害の影響で既往の住宅ローンや事業性ローンを返済できない(または近い将来返済できないことが確実と見込まれる)といった一定の要件を満たす個人が、自己破産などの法的な倒産手続によらずに、金融機関との合意にもとづいて借金(債務)を整理できる仕組みです。条件を満たせば、手元に一定の財産(生活再建のためのお金など)を残しながら整理を進められる場合があり、自己破産と違って原則として個人信用情報(いわゆるブラックリスト)に登録されない点も大きな特徴です。
住宅ローン返済中に住宅が損壊した方はもちろん、被災により収入が減ってローンの返済が困難になった・困難になりそうな方にこそ知っておいていただきたい制度です。「もう自己破産しかない」とあきらめてしまう前に、まずは相談先を確認してみてください。ご自身だけでなく、被災したご家族・ご親族・知人がいる方も、以下の公式窓口でどのようなサポートを受けられるか、今後の返済をどう調整できるかを確認していただければと思います。
制度の詳細は公式サイトで確認いただくのが確実ですが、家計を守る視点でのポイントを整理すると次のとおりです。
※適用には、災害救助法が適用された自然災害の影響で返済が困難になっていることなど、一定の要件があります。利用できるかどうか・具体的な手続きは、必ず下記の公式窓口でご確認ください。
自己破産との主な違いを表にまとめると、次のようになります。
| 比較の観点 | 自然災害債務整理ガイドライン | 自己破産 |
|---|---|---|
| 手続きの性質 | 金融機関との合意にもとづく債務整理(特定調停を活用) | 裁判所による法的な倒産手続き |
| 個人信用情報への登録 | 原則として登録されない | 登録される(新規の借り入れやクレジットカード作成が難しくなる) |
| 官報への氏名掲載 | なし | あり |
| 手元に残せる財産 | 生活再建のための財産を一定程度残せる場合がある | 法律で認められた範囲を超える財産は原則として処分の対象 |
| 専門家の支援 | 登録支援専門家の支援を無料で受けられる | 弁護士等への依頼費用は原則自己負担 |
※上記は概要の比較です。個別の取り扱いは事案によって異なるため、詳細は公式窓口・専門家にご確認ください。
ガイドラインの対象は、2015年(平成27年)9月2日以降に災害救助法が適用された自然災害の影響を受けた個人の方です。運営機関の公式サイトでは対象となる災害が随時追加されており、2026年8月30日に確認したところ、「令和8年熊本地震」(2026年7月29日追加)、「令和8年8月13日からの大雨に伴う災害」(同8月14日追加)、「令和8年8月27日からの大雨に伴う災害」(同8月27日追加)といった直近の災害も対象リストに加わっています。
また、災害救助法が適用された市町村以外にお住まいの方も対象になり得ます(その災害の影響で返済が困難になった場合)。「自分の地域は適用外だから」とあきらめる前に、まずは確認してみてください。なお、実際に利用できるかどうかは要件の確認・審査があり、個々の状況によって異なります。
おおまかな流れは次のとおりです。
詳しい流れ・必要書類は、運営機関公式サイトの「手続の流れ」のページで確認できます。
このガイドラインは、もともと東日本大震災を契機とした個人債務者の私的整理の枠組みを引き継いで2015年12月に策定され、2016年4月から適用が始まった民間の自主的なルールです。登録支援専門家の委嘱などの事務は、2017年(平成29年)6月に全国銀行協会から一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関へ事業譲渡され、現在も同機関が運用しています。また、新型コロナウイルス感染症の影響で返済が困難になった方を対象とする特則(2020年12月適用開始)も設けられています。
大きな災害の後は窓口が混み合い、対応に時間がかかる可能性もあります。相談したい内容がある方は、早めに問い合わせておくと安心です。なお、運営機関を装った偽サイトの存在が確認されています(運営機関も公式サイトで注意喚起しています)ので、必ず下記の公式URLからアクセスしてください。
一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関(公式サイト)
https://www.dgl.or.jp/guideline/
全国銀行協会(自然災害債務整理ガイドラインの解説)
https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/disaster-guideline/
まずは借入先の金融機関と、上記の運営機関の公式窓口に相談してみましょう。ガイドラインを利用する場合は、最初に借入先の金融機関へ着手の申し出をするのが一般的な流れです。手続きには登録支援専門家の無料サポートを受けられます。一人で抱え込まず、早めに相談することが家計の立て直しの第一歩です。
対象になり得ます。ガイドラインの対象は「建物が壊れた方」に限られず、自然災害の影響によって住宅ローン等の既往債務を返済できない、または近い将来返済できないことが確実と見込まれる方です。災害救助法が適用された市町村以外にお住まいの方も対象になり得ます。実際に利用できるかどうかは一定の要件の確認がありますので、借入先の金融機関・公式窓口でご相談ください。
ガイドラインは、金融機関との合意にもとづいて債務を整理する仕組みで、原則として信用情報に登録されず、生活再建のための財産を一定程度残せる場合がある点が自己破産と異なります(上の比較表もご覧ください)。お子さんの進学や当面の暮らしを守りながら再スタートを目指したいご家庭にとって、検討する価値のある選択肢です。具体的な要件は公式窓口でご確認ください。
万一に備えるという意味では、火災保険(水災補償の有無の確認を含む)・地震保険への加入や、無理のない返済比率での借り入れ、一定の生活防衛資金の確保が基本になります。住宅ローンを組む段階から「もしものとき家計が耐えられるか」を意識しておくことが、家族の暮らしを守ることにつながります。被災してしまった場合には、本記事で紹介したガイドラインのような支援制度があることも覚えておきましょう。
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