公開日: 2026年9月15日
住宅を購入するとき多くの人が気にするのが「自分はいくらまで住宅ローンを借りられるのか」という点でしょう。しかし、子供がいる家庭、または今後子供を持つ予定がある家庭では、住宅ローンを考える際にもう一つ重要なポイントがあります。
それが、将来の教育費です。
住宅ローンは30年、35年、あるいは40年以上にわたって返済を続けることもあります。その間には、子供の出産をはじめとするさまざまなライフイベントが訪れます。子供が産まれた後も、学校の進学や受験、塾や習い事といった教育費用が必要となるでしょう。
ただ、ここで注意したいのが、住宅ローンの返済と大学などの高額な教育費が重なる時期です。
金融機関から「4,000万円借りられる」と言われても、こういった高額な教育費のことを考えると、4,000万円を借りても問題ないとは言い切れません。返済と教育費を両立させて、無理なく返済していくにはどうしたらいいのでしょうか。
本記事では、子供の教育費を考慮しながら、無理のない住宅ローン返済計画を立てるためのポイントを詳しく解説します。これから子供を考えている方も、子育て中の方も是非参考にしてみてください。
住宅ローンを申し込むと、金融機関は年収や勤務先・勤続年数・住宅ローン以外の借入状況などをもとに、いくらまで融資できるかを審査します。ただ、金融機関が貸してくれる(貸せる)金額と家計に無理なく返済できる金額は必ずしも同じではありません。
返済できる金額を借りるというのは子供がいない場合でも同じですが、子供がいる場合、または今後子供を持ちたいと考えている場合だと返済できるかどうかに加えて「教育費」の問題が出てきます。現在は子供がまだ小さくて教育費がそれほどかからない家庭でも、10年後、15年後には中学受験や高校受験などで環境が大きく変わってくるものです。
例えば、子供が成長した際には具体的に次のような支出が増えていきます。
・ 塾や習い事の費用
・ 中学・高校・大学の入学費用
・ 私立学校の授業料
・ 大学の授業料
・ 教材費や通学費
・ 一人暮らしをする場合の家賃や生活費
これらの支出はどれも高額となるため、子育て世帯が住宅ローンを組む際には、現在の家計だけではなく子供が幼稚園・保育園から大学生になる頃の家計まで想定して考えることが重要です。
教育費は、子供が公立と私立のどちらに進学するか、また親が子供に何をさせたいかによって大きく異なってきます。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によると、子供1人あたりの年間学習費総額は以下の通りです。
| 令和5年度 子供の学習費調査(文部科学省) | ||
| 学 校 | 公 立 | 私 立 |
| 幼稚園 | 約18.5万円 | 約34.7万円 |
| 小学校 | 約33.6万円 | 約182.8万円 |
| 中学校 | 約54.2万円 | 約156.0万円 |
| 高 校 | 約59.8万円 | 約103.0万円 |
※学習費総額には、学校教育費だけではなく、学校外活動費なども含まれます。
これらの調査をもとに、幼稚園から高校までの教育費をすべて公立に進学すると仮定して単純計算すると、以下のようになります。
| すべて公立に進学した場合の教育費 | |
| 幼稚園(3年間) | 約55万円 |
| 小学校(6年間) | 約202万円 |
| 中学校(3年間) | 約163万円 |
| 高 校(3年間) | 約179万円 |
これらの教育費を合計すると、約599万円となりました。
一方で、幼稚園から高校まで私立に進学した場合も見てみましょう。
同じように計算すると、教育費は合計で約1,978万円に達します。すべて公立に進学した場合と比べると、2倍以上かかる計算です。
もちろん、実際はすべての家庭がこのような極端なケースになるわけではありません。
しかし、公立か私立かによって子供1人あたりの教育費が1,000万円以上変わる可能性があることは覚えておきましょう。
教育費のなかでも、特に家計への負担が大きくなりやすいのが大学・短期大学・専門学校へ進学する時です。
先ほどは幼稚園・保育園から高校生までの教育費でしたが、子供が大学への進学を希望している場合がさらに教育費がかかります。特に近年は就職のことを考えて大学に進学するといった風潮もありますので、教育費を考える際は必ず大学進学までを想定してシミュレーションしたいところです。
奨学金制度などで有名な日本学生支援機構の「令和4年度学生生活調査」によると、大学学部昼間部の年間学生生活費は自宅通学か自宅外通学かによって大きな差があります。
例えば、自宅通学の学生とアパートなどで一人暮らしをする学生とでは、年間の学生生活費に大きな差が生じています。
| 大学(昼間部)の年間生活費 | |
| 自宅から通学 | 約164万円/年 |
| 賃貸を借りて通学 | 約212万円/年 |
これを踏まえて4年間の大学生活費用を単純計算すると、以下のようになります。
| 大学(昼間部)の生活費(4年間) | |
| 自宅から通学 | 約657万円 |
| 賃貸を借りて通学 | 約850万円 |
こうして比較すると、自宅から通学する場合と賃貸を借りて通学する場合とでは、200万円近い差があることが分かるかと思います。
ただし、これはあくまで国公私立を含む平均であり、子供が希望する大学や学部、地域、住む住居の形態などによって実際の費用は大きく異なります。
特に、同じ一人暮らしであっても地方から首都圏や都市部の大学へ進学する場合は、住居を探すための移動距離・移動手段によって交通費用などが大きく変化します。
加えてオートロックや女性専用アパートなど安全を考慮した物件を選ぶ場合はさらに生活費がかかることも覚えておきたいところです。
子育てをするうえで教育費用は必要不可欠なもので、決して削ることができない費用になります。
それを踏まえたうえで、子育て世帯が住宅ローンを組む際に注意したいのは、教育費のピークと住宅ローン返済が重なる時期です。
例えば35歳で住宅ローンを組み、子供が5歳だったとします。35年ローンを組んだ場合、住宅ローン返済年数に応じた子供の年齢は次のようになります。
| 親の年齢 | 子供の年齢 | 子供の生活の変化・イベント |
| 35歳 | 5歳 | 住宅ローン開始(35年ローン) |
| 42歳 | 12歳 | 中学受験などの進学準備 |
| 45歳 | 15歳 | 高校受験などの進学準備 |
| 48歳 | 18歳 | 大学などの進学準備 |
| 50歳前半 | 20歳前半 | 大学卒業・就職活動 |
| 70歳 | 40歳 | 住宅ローン完済 |
上記の表を見てもらうと分かる通り、住宅ローンを組んでから10年~20年程度経過した頃に、子供の進学・卒業といったイベントが立て続けに起きるため、住宅ローンの返済を続けながら大学の入学金や授業料を支払なければいけない状況が発生します。
住宅ローンを申し込む際に、この住宅ローンと教育費が重なるタイミングを考慮せず現在の収入だけを基準に住宅ローンを組むと、10年・20年先の未来で教育費との両立が厳しくなり家計が苦しくなるかもしれません。
さらに、住宅ローンと教育費を考えるうえで子供の人数と年齢も重要となってきます。
当然、子供の人数が多い家庭ほど教育費は人数分だけかかるため、貯蓄をしてより余裕を残していく必要があります。
ただ、子供が複数人いる場合は、単純に「子供が2人なら教育費も倍になる」と考えるだけでは返済計画として不十分です。
例えば、子供が2人いて年齢差が2歳の場合、中学校・高校・大学の入学と進学の時期が重なる可能性があります。一方で、年齢差が5歳以上ある場合は教育費のピークがある程度分散される傾向にあります。
このように、返済計画を立てる際は、子供の人数だけでなく進学などの節目の重なりにも注目して借入金額を設定するようにしましょう。
これから住宅ローンを検討している人の中には、「将来の子供の教育費が心配なら、住宅ローンの借入額をできるだけ少なくしたほうがいいのでは?」と考える人もいるでしょう。
しかし、住宅をなるべく自己資金で購入しようと無理をすれば、当たり前ではありますが支払った分だけ手元の貯蓄からなくなっていきます。
手元の貯蓄が少ないと、急な出費が発生した際に対応できず、結果的に教育だけでなく生活自体が苦しくなる可能性が出てきてしまいます。
そう考えると、頭金を多く入れたり貯蓄を住宅購入費に充てて住宅ローンの借入額を抑えることはそれほど良い方法とは言えません。
きちんと返済計画を立てたうえで住宅ローンを利用し、万が一に備えて手元にある程度資金を残しておくほうが、長く生活するうえでは重要といってもいいでしょう。
特に子供がいる家庭では、住宅購入後も教育費を積み立て続ける必要があります。
住宅購入の際には、住宅ローン残高だけでなく「購入後にどれだけ貯蓄を残せるか」も考慮して、自己資金からどのくらい支払いをするか決めたいところです。
近年では、35年を超える「超長期住宅ローン」を取り扱う金融機関も増えています。
同じ借入金額であっても、返済期間を40年・50年と長くすると毎月の返済額を抑えられます。この超長期住宅ローンを利用することで「子供が大学生になるまでの20年間は住宅ローン返済額を抑えつつ教育費を確保。大学卒業後など教育費が落ち着いたら繰上返済をする」という考え方も可能になってきているというわけですね。
ただし、超長期の住宅ローンには注意点もあります。
【40年・50年住宅ローンの注意点】
長期型の住宅ローンでは、教育費が大きくなる時期に毎月の返済額を抑えながら将来的には住宅ローン残高を減らしていく計画を立てるのが重要です。単純に「返済期間を長くすれば安心」というわけではありませんので、自分達の将来設計に合っているかどうか吟味したうえで申し込みましょう。
子供がいる世帯の場合、住宅ローン商品によっては「子育て世帯向けの金利引下げ制度」を利用できるケースがあります。
例えば、住宅金融支援機構の「フラット35」には、「【フラット35】子育てプラス」という制度があります。
これは、子育て世帯や若年夫婦世帯を対象とし、子供の人数などに応じて、当初一定期間の借入金利を引き下げる仕組みです。
子供1人の場合と2人、3人の場合では金利引下げ幅が異なり、子供の人数に応じてポイントが加算される仕組みとなっています。
子供がいる世帯でこれから住宅購入を考えているという方は、こういった子育て世帯向けの制度を金融機関で実施しているかどうかチェックしたいところです。
ただし、適用条件や実際の金利は申込時期や利用する金融機関などによって異なるため、住宅ローンを申し込む際には必ず最新の条件を確認しましょう。
住宅ローンを組む前には、現在の家計だけではなく、今後20年程度の家計を簡単にシミュレーションしてみることをおすすめします。
特に確認したいのは、次の5つです。
子供の人数によって、将来必要になる教育費は大きく変わります。
現在子供が1人であっても、今後2人目・3人目と人数が増えていく可能性も含めて住宅ローンを検討しましょう。
上記でも説明した通り、子供同士の入学・進学時期が重なると一時的に教育費が大幅に増える可能性があります。
子供同士の年齢差を計算して、住宅ローン返済と複数人分の大学費用が重なると分かった場合は、双方の学費と住宅ローンを計画的に支払えるかどうかシミュレーション等で確認しておきましょう。
子供の進学先をすべて公立で考えるか、中学から私立も選択肢に入れるのかによって、必要な教育資金は大きく変わってきます。
もちろん、最初から子供の進路を決める必要はありませんが、たとえ公立・私立どちらになったとしても無理なく返済できるように余裕を持った資金計画を立てることが大切です。
地方在住の家庭などでは、大学進学を機に子供が都市部で一人暮らしを始める可能性があります。
この場合、学費だけではなく、家賃や生活費なども必要になりますので、大学費用を考える際は「学費だけ」で計算しないよう注意しましょう。
最も重要なのが、「子供が大学生になった時に住宅ローン返済と教育費を両方支払えるか?」という点です。
現在の家計では問題なくても、15年後、20年後と教育費がピークに達するタイミングになると、家計が厳しくなる可能性があります。
そういったことがないように、保育園・幼稚園の入学から大学の進学・卒業まで、教育費が多く必要となる時期に自分たちは何歳だろう?と考えておくと、その時期が来た際に焦らずに済みます。
住宅ローンを利用するうえで、将来に渡る子供の教育費の確保というのは欠かすことができないポイントとなります。
そのため、教育費を考慮しながら住宅ローン計画を立てる際には、次のように考えておくのが有効です。
まず、住宅ローンを利用する際は、金融機関が提示する借入可能額いっぱいまで借りるのではなく、将来的に予想される教育費や貯蓄を考慮して借入額を決めます。
また、ボーナスを利用して住宅ローンを返済したり、住宅ローンを早く返済したいために繰上返済を急いでしまう人もいるかと思います。
早く返済したいという気持ちは悪いことではないのですが、ボーナスも毎年同じ額が支給されるわけではありません。教育費は毎年決まった額のほか、入学時などにまとまった支出が必要になることもあります。そういったタイミングでは繰上返済よりも手元資金を確保する方が重要です。
特に、大学進学などを考えているのであれば、進学直前になってから教育資金を準備するのではなく、子供が小さいうちから計画的に積み立てておくことで将来の負担を軽減できます。
一度繰上返済した分の資金は、当然教育費に戻すことはできません。
住宅ローンを返済する時期や金額など、住宅ローンの金利と教育費の必要時期を比較しながら、ボーナスが減少した場合でも返済できるよう計画的に返済していきましょう。
住宅ローンは、住宅を購入する時点の収入だけで考えるものではありません。
特に子供がいる家庭では、将来発生する教育費を考慮して、長期的な返済計画を立てる必要があります。
ポイントをまとめると、次のとおりです。
住宅ローンは、一度契約すると長期間にわたって家計に影響します。
だからこそ、「今の収入ならいくら借りられるか」だけではなく、子供が高校生・大学生になったときでも無理なく返済を続けられるかという視点を持つことが大切です。
マイホーム購入と子供の教育、どちらも家族にとって重要なライフイベントです。
住宅ローンを検討する際には、教育費を含めた長期的な家計シミュレーションを行い、自分たちの家庭に合った無理のない借入額を決めるようにしましょう。
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