公開日: 2026年9月25日 更新日: 2026年9月26日

離婚しても、住宅ローンの契約は自動では変わりません。名義人・ペアローン・連帯債務といった契約の形のまま返済義務が残るため、「家を売って完済する」「住み続ける人の名義で借り換える」のどちらかで整理するのが基本です。
厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、2025年の離婚件数は17万9,068組でした(厚生労働省 令和7年人口動態統計月報年計(概数))。マイホームを持つご家庭では、財産分与と並んで住まいとローンの扱いが大きな悩みになります。
住宅は2つに分けられず、住宅ローンの残高は負債として残ります。子どもの学校や生活環境を変えたくないという理由から、どちらかが住み続けたいと考えるご家庭も多いでしょう。
ここでは、契約の形ごとに取れる選択肢と、住み続ける側が借り換えるときの審査・諸費用の注意点を、家族の暮らしを守る視点で整理します。
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住宅ローンの組み方は大きく次の3種類があり、どの契約形態かによって、取れる選択肢が変わります。
それぞれの主な選択肢と難しさを並べると、次のようになります。
| 比較の観点 | 単独ローン | ペアローン | 連帯債務 |
|---|---|---|---|
| 返済義務を負う人 | 名義人1人(配偶者が連帯保証人の場合あり) | 2人がそれぞれ自分のローンを返済し、互いに連帯保証人 | 2人が1本のローン全額に責任を負う |
| 名義人が住み続ける | 比較的進めやすい(連帯保証人の扱いは要相談) | 家を出る側の契約が残るため整理が必要 | 家を出る側の債務が残るため整理が必要 |
| 名義人でない側が住み続ける | 住む人の名義で借り換えが必要 | 住む人が1本のローンに借り換えが必要 | 住む人の単独ローンに借り換えが必要 |
| 借り換えの難しさ | 住む人の収入だけで審査に通るかが焦点 | 2人分の借入を1人で借りるため審査のハードルが高い | 合算していた収入を1人分で審査するためハードルが高い |
夫婦のどちらかが住宅ローンを組んでいる場合の主な選択肢は、次の3つです。ここでは、夫が単独で住宅ローンを組んでいるケースで考えます。
自宅を売却して住宅ローンを完済すれば、財産分与で不動産と残債を扱う必要がなくなります。ただし、住宅の価値が残債を下回っていたり、どちらかが住み続けたい意思があったりすると、売却を選べないこともあります。
債務者である夫が住み続ける選択肢は、比較的現実的です。ただし、妻が連帯保証人になっている場合は、連帯保証を外せるかを金融機関に相談する必要があります。外せる場合は、代わりの連帯保証人を立てたり、保証会社を利用したりする方法があります。
借りた当初は収入合算のために配偶者の連帯保証が必要だった場合でも、その後に債務者の収入が上がっていれば、連帯保証人なしで借り換えられる可能性があります。今の銀行だけでなく、他の金融機関にも相談してみるとよいでしょう。
妻が住み続け、債務者である夫が家を出る場合は、夫が銀行から住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。
住宅ローンは、債務者が担保の物件に住むことを前提に、低い金利や団信が設定されています。債務者が住まなくなると契約違反にあたり、一括返済を求められるおそれがあります。
妻が住み続けたいなら、夫に代わって妻が住宅ローンを借り、物件の所有者も妻に変更する必要があります。お金の流れは次のとおりです。
実質的には、夫の住宅ローンを妻の住宅ローンに借り換える手続きで、妻が単独で審査に通ることが前提になります。夫に貸している銀行にとっては、完済してもらえれば大きな問題はないはずです。
ただし、「離婚に伴う取得」という事情を伝えると、住宅ローンに応じてもらえないケースもあります。抵当権の抹消と設定の流れは通常の売買と大きく変わらないものの、金融機関によって対応が分かれる点は知っておきましょう。
ペアローンは、夫婦や親子がそれぞれ住宅ローンを組み、1つの住宅を購入する方法です。2人の収入で借入可能額を増やせる一方、互いに相手のローンの連帯保証人になるのが一般的で、一方が返せなくなるともう一方が返済責任を負います。
ペアローンの場合は、住宅の売却を検討するのが一般的です。どちらかが住み続けると、家を出た側の住宅ローンが「本人が住まない契約」になってしまうからです。
ペアローンを1本の住宅ローンに借り換え、住み続ける側が1人で返済する方法もあります。ただ、2人分の借入を1人で背負うことになるため、収入によっては審査に通らない可能性が高くなります。
家を出る側に資金があり、自分のローンを完済できたとしても、相手のローンの連帯保証人から外れられるかという問題が残ります。売却してローンも家もない状態にできれば、こうした心配はなくなります。どの方法が現実的か、借入先の担当者とよく相談しましょう。
連帯債務は、1本の住宅ローンを2人が連帯して返済する仕組みです。物件を売却してローンを完済するのが、最もわかりやすい方法です。単独の住宅ローンへの借り換えや、連帯債務者の変更も理屈のうえでは考えられます。
ただし、2人分の収入を合算して通った審査を1人で組み直すのはハードルが高く、連帯債務者の変更に銀行が応じないこともあります。
主債務者が住み続け、家を出た連帯債務者が返済に協力する方法も考えられます。しかし主債務者の返済が滞れば、知らないうちに滞納がかさむおそれがあり、見えないところにリスクが残ります。財産分与の観点からも、売却の方向で考えるのがわかりやすいでしょう。
ローン残高が住宅の価値を上回っている状態を「オーバーローン」、住宅の価値がローン残高を上回っている状態を「アンダーローン」といいます。
アンダーローンなら、売却してローンを完済でき、財産分与の話し合いも進めやすくなります。オーバーローンでは売却しても債務が残るため、銀行が売却を認めない可能性があります。まずは不動産会社の査定と、借入先でのローン残高の確認から始めましょう。
任意売却は、オーバーローンでも銀行の同意を得て物件を売却する方法です。ペアローン・連帯保証・連帯債務を解消したいのに、売却代金で完済できない場合の選択肢になります。
任意売却は、競売よりも売却価格が高めになる傾向があります。売却後に残る債務を返せる水準に抑えるためにも、知っておきたい手段です。
自宅を財産分与する場合、受け取る側には原則として贈与税はかかりません。ただし、分与額が夫婦の協力で得た財産などを考えても多すぎる場合は、その超える部分に贈与税がかかります(国税庁 No.4414 離婚して財産をもらったとき)。
一方、土地や建物を渡す側は、分与したときの時価で譲渡したものとして譲渡所得の対象になります(国税庁 No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき)。名義変更の登記には登録免許税もかかるため、税理士や司法書士に早めに確認しておくと安心です。
住み続ける側の名義で借り換える場合は、おおむね次の順で進めます。
借り換えでは、事務手数料や登記費用などの諸費用がかかります。養育費や教育費を含めた離婚後の家計で、無理なく返せる借入額かを先に確かめておくことが、子どもの暮らしを守ることにもつながります。借り換え全体の流れは住宅ローン借り換えの手順と必要書類・諸費用、失敗しやすい点は住宅ローンの借り換えで注意すべき7つのことで解説しています。
離婚に伴う借り換えへの対応は金融機関によって異なります。そのなかでSBI新生銀行は、よくある質問で、元配偶者の住宅ローンを引き継ぐための借り換えについて、次の条件を満たせば申し込めると案内しています(2026年9月時点)。
同行は、この場合に借入人へ贈与税が課税されることがあるとも注意を促しています。条件を満たせば必ず借りられるわけではなく、ほかの借り換えと同じく審査があります。
借り換え先の候補として検討する場合は、次のような特徴と注意点をほかの金融機関と同じ目線で比べましょう(2026年9月時点)。
※介護保障を付けた「安心保障付団信」、元金の返済を一時的に据え置ける「コントロール返済(元金据置サービス)」は、いずれも新規の取り扱いを終了しています。
団信(団体信用生命保険)は、住宅ローンを借りた人が死亡・所定の高度障害状態になったとき、保険金でローン残高が返済される仕組みです。ひとりで子育てをしながら返済していく方にとって、団信は子どもの住まいを守る大切な備えになります。借り換えで保障内容がどう変わるかも確認しておきましょう。
A. 住み続ける人が単独で審査に通れば可能です。ただし2人分の借入を1人の収入で借り直すため、ハードルは高めです。難しい場合は、売却して完済する方法も含めて検討しましょう。
A. 離婚だけでは外れません。外すには金融機関の承諾が必要で、代わりの保証人を立てる、保証会社を利用する、単独で借り換えるといった方法を相談することになります。
A. 財産分与として受け取る側には原則として贈与税はかかりませんが、多すぎる分与には課税されます。渡す側は時価での譲渡として譲渡所得の対象になり、登記には登録免許税がかかります。
A. 世帯の手取りに対する返済額と、教育費・養育費を含めた支出全体を見て判断します。返済比率に余裕を持たせることが、離婚後の暮らしを安定させる鍵です。ひとり親向けの手当や支援制度も確認しましょう。
A. 住み続ける側の名義で借り換えができれば実現しやすくなります。その方が単独で審査に通ることと、返済を続けられる家計であることが前提です。まずは今の借入先や、離婚時の借り換えに対応する金融機関に相談しましょう。
住宅ローンがある方が離婚する場合は、ペアローン・連帯保証・連帯債務といった共同の返済責任を断ち切るためにも、できれば売却して完済することを目指したいところです。住宅ローンを残すなら、住み続ける方が単独で債務を負う形が望ましいでしょう。
家庭の事情によって抱える問題はさまざまです。財産分与や子どもの将来を見据えた計画を立て、専門家や金融機関に早めに相談することが、離婚後の暮らしを落ち着いて始めるための第一歩になります。借り換え先を比べたい方は、住宅ローン借り換えランキングも参考にしてください。最新の商品内容・審査条件は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
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