2024年5月20日
この記事では2022年度のフラット35の制度解説について解説しています。
長期固定金利タイプの住宅ローンといえば、定番は【フラット35】です。【フラット35】は住宅金融支援機構と全国の金融機関が連携して提供している住宅ローンです。【フラット35】は固定金利のため、日銀が利上げをしたとしても、その影響を受けないという安心感が特徴ですが、変動金利の住宅ローンよりは利率が高めになっています。
実は、2022年10月から、【フラット35】に金利を引き下げるポイント制度が導入されました。このポイント制度は、「住宅性能」「管理・修繕」「エリア」の3つの項目で各々付与されます。合計ポイントの数値が高ければ、最高で年0.5%の金利引下げが10年間適用されます。この記事では、【フラット35】のポイント制度について解説します。
※本文中に記載の表は「住宅金融支援機構 2022年10月版 住宅ローンのご案内[買取型]」https://www.flat35.com/files/400343049.pdfを基に筆者が作成しております。
目次
2022年10月以降に始まったポイント付与制度は、「住宅性能」「管理・修繕」「エリア」の3つの項目でそれぞれポイントが付与され、合計ポイントによって通常の【フラット35】から一定の金利が引き下げられます。項目ごとに付与されるポイントと金利の引下げ幅は以下のとおりです。
住宅性能によるポイント |
【フラット35】S(ZEH):3ポイント 【フラット35】S(金利Aプラン):2ポイント 【フラット35】S (金利Bプラン) :1ポイント 【フラット35】リノベ (金利Aプラン) :4ポイント 【フラット35】リノベ (金利Bプラン):2ポイント |
管理・修繕によるポイント |
長期優良住宅:1ポイント 予備認定マンション:1ポイント 管理計画認定マンション:1ポイント 安心R住宅:1ポイント インスペクション実施住宅:1ポイント 既存住宅売買会保険付保住宅:1ポイント |
エリアによるポイント |
【フラット35】地域連携型 子育て支援:2ポイント 地域活性化:1ポイント
【フラット35】地方移住支援型 地方移住支援型:2ポイント |
|
1〜5年目 |
6〜10年目 |
1ポイント |
▲0.25% |
– |
2ポイント |
▲0.25% |
▲0.25% |
3ポイント |
▲0.50% |
▲0.25% |
4ポイント |
▲0.50% |
▲0.50% |
「住宅性能」「管理・修繕」「エリア」3つのポイント付与項目のうち、まずは「住宅性能」について解説します。
一言で【フラット35】といっても、細かく分けると種類が複数あります。購入物件の住宅性能によって、【フラット35】Sや【フラット35】リノベといったプランが選択できます。2022年10月から、下記5種類の【フラット35】系の住宅ローンを利用した方には、一定のポイントが付与されます。付与されたポイントによって、金利が引下げられます。
<ポイント制度の対象になるフラット35の種類>
【フラット35】S(ZEH) 【フラット35】S(金利Aプラン) 【フラット35】S (金利Bプラン) 【フラット35】リノベ (金利Aプラン) 【フラット35】リノベ (金利Bプラン) |
なお、【フラット35】Sや【フラット35】リノベのような金利の引下げポイントが付与される制度を利用する際には、ローンの対象物件が、【フラット35】の技術基準をクリアした上で、さらにそれぞれの種類ごとの基準を満たす必要があります。
<【フラット35】の技術基準>
新築住宅:人が住んだことがない住宅で借入申込日に竣工2年以内のもの
|
戸建て等 |
マンション |
|
接道 |
一般道路に2m以上 |
||
住宅の床面積 |
70㎡以上 |
30㎡以上
|
|
住宅の規格 |
居住室2部屋、キッチン、トイレ、バスの設置 |
||
併用住宅の床面積 |
住宅部分が半分以上 |
||
戸建型式など |
耐火、準耐火構造以外の木造住宅は一戸建てまたは連続戸建てのみ |
||
断熱構造 |
天井、屋根、外壁、床下に所定の断熱材を施工 |
||
住宅の構造 |
耐火、準耐火構造または耐久性基準を満たす |
||
配管設備の点検 |
点検口などあり |
共用配管が構造耐力上主要な壁の内部にない |
|
区画 |
住宅相互間等を所定の界床、界壁で区画 |
||
床の遮音構造 |
– |
RCの場合、界床厚さ15cm以上 |
|
維持管理基準 |
管理規約 |
– |
管理規約が定められている |
長期修繕計画 |
– |
計画期間が20年以上ある |
中古住宅:人が住んだことがあるまたは竣工から2年を超えている
|
戸建て等 |
マンション |
|
接道 |
一般道路に2m以上 |
||
住宅の床面積 |
70㎡以上 |
30㎡以上
|
|
住宅の規格 |
居住室2部屋、キッチン、トイレ、バスの設置 |
||
併用住宅の床面積 |
住宅部分が半分以上 |
||
戸建型式など |
耐火、準耐火構造以外の木造住宅は一戸建てまたは連続戸建てのみ |
||
断熱構造 |
天井、屋根、外壁、床下に所定の断熱材を施工 |
||
住宅の構造 |
耐火、準耐火構造または耐久性基準を満たす |
||
住宅の耐震性 |
建築確認日が1981年6月1日以降、または左記より過去の場合は耐震評価基準等に適合している |
||
劣化状況 |
土台、床組などの腐朽、蟻害がない |
外壁、柱などに鉄筋の露出がない |
|
床の遮音構造 |
– |
RCの場合、界床厚さ15cm以上 |
|
維持管理基準 |
管理規約 |
– |
管理規約が定められている |
長期修繕計画 |
– |
計画期間が20年以上ある |
3ポイントが付与される【フラット35】S(ZEH)は、【フラット35】の技術基準を満たした上で下記の基準を満たした場合に利用できます。ZEH住宅とは、ネットゼロエネルギーハウスの略称で、高断熱と高い省エネ性能、そして太陽光発電などの発電機能を兼ね揃えることで1年間の実質エネルギー消費量をゼロに抑えた住宅のことをいいます。【フラット35】S(ZEH)の利用者には3ポイントが付与されます。
<【フラット35】S(ZEH)を利用するための基準>
戸建の場合
|
断熱等性能 |
一次エネルギー消費量 |
適用条件 |
|
再エネ除く |
再エネ含む |
|||
ZEH |
強化外皮基準 【耐熱等性能等級5】 相当 |
▲20%以上 |
▲100% |
|
Nearly ZEH |
▲75%以上 ▲100% 未満 |
寒冷地 低日射地域 多雪地域 |
||
ZEH Oriented |
必要なし |
都市部狭小地 多雪地域 |
マンション等の場合
|
断熱等性能 |
一次エネルギー消費量 |
住宅用途の 階層数 |
|
再エネ除く |
再エネ含む |
|||
ZEH-M |
強化外皮基準 【耐熱等性能等級5】 相当 |
▲20%以上 |
▲100% |
1〜3層 |
Nearly ZEH-M |
▲75%以上 ▲100% 未満 |
|||
ZEH-M Ready |
▲50%以上 ▲75% 未満 |
4〜5層 |
||
ZEH-M Oriented |
必要なし |
6層 |
【フラット35】S(金利Aプラン) は2ポイント、【フラット35】S (金利Bプラン)は1ポイントが付与されます。それぞれのプランを利用する際の住宅基準は以下のとおりです。
<新築の【フラット35】S(金利Aプラン)の住宅性能基準>
|
住宅性能が下記いずれか1つ以上を満たす |
省エネルギー性 |
耐熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6 |
耐震性 |
耐震等級3 |
免震建築物 |
|
バリアフリー性 |
高齢者等配慮対策等級4以上(共同建ての場合3でも可) |
耐久性・可変性 |
長期優良住宅 |
<新築の【フラット35】S(金利Bプラン)の住宅性能基準>
|
住宅性能が下記いずれか1つ以上を満たす |
省エネルギー性 |
耐熱等性能等級4かつ、一次エネルギー消費量等級6 |
耐熱等性能等級5以上かつ、一次エネルギー消費量等級4or5 |
|
耐震性 |
耐震等級2以上 |
バリアフリー性 |
高齢者等配慮対策等級3以上 |
耐久性・可変性 |
劣化対策等級3かつ、維持管理対策等級2以上 (共同建ての場合一定の更新対策が必要) |
<中古の【フラット35】S(金利Aプラン)の住宅性能基準>
|
住宅性能が下記いずれか1つ以上を満たす |
省エネルギー性 |
耐熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級6 |
耐熱等性能等級5以上かつ、一次エネルギー消費量等級4以上 |
|
耐震性 |
耐震等級2以上 |
免震建築物 |
|
バリアフリー性 |
高齢者等配慮対策等級3以上 |
耐久性・可変性 |
長期優良住宅(維持保全計画認定含む) |
劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2以上 (共同建ての場合一定の更新対策が必要) |
<中古の【フラット35】S(金利Bプラン)の住宅性能基準>
|
住宅性能が下記いずれか1つ以上を満たす |
省エネルギー性 |
開口部断熱 |
外壁等断熱 |
|
バリアフリー性 |
高齢者等配慮対策等級2以上
|
【フラット35】リノベ は、中古住宅を購入してリフォームを行うことで、住宅が省エネ、耐震、バリアフリー、耐久性・可変性の性能基準のいずれかを満たすことで利用できます。
金利Aプランは4ポイント、 金利Bプランは2ポイントが付与されます。利用のためには、工事費用を金利Aプランは300万円以上、 金利Bプランは200万円以上かけ、下記の住宅性能の基準を満たし、中古住宅の維持保全に係る措置を講じている必要があります。
<【フラット35】リノベ(金利Aプラン)の住宅性能基準>
|
リフォーム工事後に住宅性能が下記いずれか1つ以上を満たす |
省エネルギー性 |
耐熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級6 |
耐熱等性能等級5かつ、一次エネルギー消費量等級4以上 |
|
耐震性 |
耐震等級2 |
免震建築物 |
|
バリアフリー性 |
高齢者等配慮対策等級3以上 |
耐久性・可変性 |
長期優良住宅(維持保全計画認定含む) |
劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2以上 (共同建ての場合一定の更新対策が必要) |
<【フラット35】リノベ(金利Bプラン)の住宅性能基準>
|
下記いずれかのリフォーム工事を行わていること |
省エネルギー性 |
断熱材の追加工事、断熱性の高い開口部への交換工事、高効率空調機,高効率給湯器,太陽光発電設備等の設置工事 |
耐震性 |
壁、筋かい等の設置などの工事 |
バリアフリー性 |
手すり設置、通路または出入口の幅員拡張、バリアフリートイレ又は浴室への交換などの工事 |
耐久性・可変性 |
床材の交換、屋根,外壁の塗装,防水、壁紙交換などの工事 |
中古住宅の維持保全に係る措置とは以下の項目のことです。
管理・修繕によるポイントは、【フラット35】維持保全型を利用した際に付与されます。このタイプは、下記の維持や保全に配慮した住宅を購入した際に利用できます。いずれの住宅も1ポイントの付与です。
住宅の種類 |
新築中古の別 |
説明 |
長期優良住宅 |
新築住宅、中古住宅 |
法の規定による長期優良住宅建築等計画が認定された住宅 |
予備認定住宅マンション |
新築マンションのみ |
新築分譲段階の管理計画が(公財)マンション管理センターから予備認定を受けたマンション |
管理計画認定マンション |
中古マンションのみ |
地方公共団体から管理計画認定を受けたマンション |
安心R住宅 |
中古住宅のみ |
リフォーム等について情報提供が行われる中古住宅(耐震性があり、建物状況調査等が行われている) |
インスペクション実施住宅 |
中古住宅のみ |
然るべき調査の結果、劣化や腐食などの構造上の問題の不足が見られないこと |
既存住宅売買 瑕疵保険付保住宅 |
中古住宅のみ |
既存住宅売買瑕疵保険が付保された住宅 |
エリアによるポイント付与制度は、【フラット35】地域連携型を利用することで付与されます。地方公共団体の支援によって成り立っている商品です。先述のとおり3つの種類があり、「子育て支援」は2ポイント、「地域活性化」は1ポイント、「地方移住支援型」は2ポイントです。地方移住支援型のみの利用の場合は、当初10年間の金利引下げ幅は▲0.25%ではなく、▲0.30%になります。
この記事で解説したポイント制度は、2022年10月に新設されたものです。記事を読まれている方の中には「2022年9月以前に申込はしており、融資の実行が2022年10月以降」という方もいると思います。そういった方で、以下の4つのパターンに該当する方は、変更前の金利引下げ制度と、新設版のポイント制度の有利な方を選択することが可能です。詳しくは、申込みをした金融機関に相談することをおすすめします。
<新旧で有利な方を選べる4パターン>
· 【フラット35】S(ZEH)の基準に適合している場合 · 【フラット35】リノベ(金利Bプラン)で申し込んでいる場合 · 【フラット35】リノベ(金利Bプラン)+【フラット35】地域連携型(地域活性化)の組み合わせで申し込んでいる場合 · 【フラット35】S(金利Bプラン)+【フラット35】地域連携型(地域活性化)の組み合わせで申し込んでいる場合 |
(参照元)住宅金融支援機構
2022年10月から【フラット35】の金利引下げ方法が「ポイント制」に変わります。
https://www.flat35.com/topics/topics_20220617.html
フラット35は、固定金利の安心はありますが、変動金利より利率が高めなのが難点です。
ただ、本記事で紹介したポイント制度をフル活用し、なるべく利率の低い金融機関を選択すれば、当初の5年または10年はある程度の金利の引き下げが可能です。特に、長期優良住宅やZEH住宅を検討されている方にとっては一考の価値があります。
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