2020年5月21日
2016年から日本でも導入されているマイナス金利政策。マイナス金利政策の導入により2年以内に2%の物価上昇を実現したいとしてきましたが、4年経過した現在もマイナス金利政策の出口は全く見えないどころか、2020年に入って世界中で大流行している新型コロナウイルスの感染拡大を目的とした経済活動の自粛を下支えするための大規模な金融緩和の影響で出口は遠のいています。
今のところ、マイナス政策の撤廃が実現する気配はありませんが、このページでは仮にマイナス金利政策が撤廃されたときに住宅ローンの金利に与える影響を考えておきたいと思います。
目次
マイナス金利政策とは民間銀行が日銀に預け入れている預金(日銀当座預金)の金利をマイナスにする政策です。通常のプラス金利であれば、日銀が民間銀行に利息を支払うことになりますが、マイナス金利にすることで民間銀行が日銀に金利を支払うように仕向けます。そうすることで、個人・法人から預かったお金を民間銀行が日銀の口座に置きっぱなしにしないように働きかける効果を期待しているわけです。
(日銀に預けて利息を取られるぐらいなら他の使い方(個人・法人への融資など)を探そうという動きが活発化し、その結果、経済活動の活性化することでデフレからの脱却を狙う)
マイナス金利政策は2012年の衆院選挙で当時の自民党安倍総裁が大胆な金融緩和を公約に掲げ衆議院選挙で勝利したことからスタートします。
その後、日銀総裁に金融緩和論者の黒田アジア開発銀行総裁を指名、黒田・日銀による大規模な金融緩和の推進されていく中で基本的な道筋が作られました。2013年4月4日の黒田総裁体制1期目の初回会合で「量的・質的金融緩和」が導入され、この際、「2年程度で消費者物価指数を2%上昇さる、資金供給量を2倍にする」という分かりやすい目標が掲げられています。
その目標は未だに達成できずにいるわけですが、2016年1月29日の金融政策決定会合でそれまでの大規模な金融緩和では物価上昇というデフレからの脱却が実現できないと判断され、マイナス金利政策の導入が決定されています。
当時、マイナス金利政策を日銀が導入すると予想している人はほとんどおらず、マスコミ・金融関係者に大きな驚きを与えることになりました。
大きなサプライズになった一方で、マイナス金利の効果については懐疑的な意見もあります。ただし、絶大な効果があったのは住宅ローン金利の低下です。住宅ローンの金利が大きく下がったことにより、不動産会社や金融機関の住宅関連ビジネスが大きく活性化しました。
逆に弊害と言えるのは・・・・
メガバンクはもちろん、地銀の収益が大きく悪化し、リストラの積極的に行われています。
債券市場で利益が上げられなくなり、債券市場のトレーダー削減をはじめ、三菱UFJ銀行が、国債入札の特別参加者の資格を返上して当時は大きな話題になりました。
生命保険の一部商品の取り扱い中止、銀行の普通預金の低下など、資産運用には大きな障害となっています。
アベノミクスにより不動産価格は大きく上昇し、一般的な家庭では都心部にマイホームを購入するのが難しいほどです
マイナス金利政策が撤廃される条件は、「生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超える」としています。実際の消費者物価指数について2014年12月以降の数字をグラフ化したのでチェックしてみましょう。
2014年12月の物価を100としたとき指数の推移ですが、前年比で2%ずつ上昇していることが目標ですので、2015年末には102、2016年末には104、2017年末には106、2018年末には108、2019年末には110程度になっていないと日銀の目標には達していないこととなります。
日銀は当初、2年程度という目標を掲げていましたが、2016年に”時期”に触れなくなっていますが、未だに物価上昇の目標の達成が困難な状況にあります。
引用;総務省
では、今後日本でマイナス金利政策が撤廃されるのはいつになるのでしょう。この数年、世界は好景気に沸いている状態でも、日本の物価は小幅な上昇になっており、2%の上昇には遠く及んでおらず、その中で2020年に入り、新型コロナウイルスの背景とした世界的な景気後退に入っており、この数年での目標達成およびマイナス金利政策の撤廃はないと考えたほうがよいでしょう。
欧州中央銀行(ECB)が5月に発表した経済報告では2019年末のGDPに回復するのは2022年末までずれこむ可能性を指摘、FRBのパウエル議長は経済回復の過程が2021年末までずれ込む可能性を指摘するなど、コロナショック後の経済回復には1年半から2年程度の時間が必要との見方が一般的です。
FRBのリーマンショック後の政策金利ゼロ金利からの0.25%-0.50%への引き上げまでには実に8年もの時間を要しています。コロナショックを受け、日本の金融政策の正常化も、これくらいの時間軸が必要になる可能性を意識したほうが良いでしょう。
引用:外為ドットコム
マイナス金利政策が撤廃されても、長期金利が右肩上がりに上がっていく可能性は考えにくく、日本の人口の大幅な減少、高齢化など構造的なデフレ構造を考えると、低金利が継続していくと考えるの無難だと思われます。
現在のマイナス金利製政策が撤廃されたとして、マイナス金利政策直前の住宅ローン金利の水準に戻るのが無難ではないでしょうか。
マイナス金利政策が実施される前の2015年12月の住宅ローン金利は以下のような水準でした。下記のようになっています。(各金利タイプの最低金利の金融機関をピックアップ。当サイト調べ。)
金利タイプ | 金利 | 金融機関 |
変動金利 | 年0.568% | ネット銀行など |
10年固定金利 | 年0.800% | 三井住友信託銀行 |
20年固定金利 | 年1.28% | アルヒ |
35年固定金利 | 年1.550% | アルヒ |
マイナス金利政策をやめるのはまだまだ先になりそうな今の経済情勢から、短期的に住宅ローン金利がドンドン上がるというのは考えにくい状況です。
金融政策が正常化されるまでの期間は変動金利での借り入れが最も低コストとなる住宅ローンになりますので、変動金利タイプの住宅ローンを選ぶのはあながち間違いではないでしょう。
一方で低金利のうちに返済までの金利を確定したいという人も多く、2020年5月現在、35年固定金利を国内最低で提供する、フラット35を提供するARUHIや事務手数料が55,000円(税込)のSBI新生銀行の住宅ローンなども人気を集めています。
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