2020年5月15日
世界的な新型コロナウイルスのパンデミックを受けアメリカの中央銀行であるFRBが積極的な金融緩和を実施しています。
さらなる金融緩和の策として日本やEUが導入しているマイナス金利政策を米国でも導入すべきという議論が活発になっています。
特にトランプ大統領がマイナス金利政策の導入を強く求めていることで注目を浴びています。
本ページではアメリカにおけるマイナス金利政策の導入の可能性を考えていき、日本の長期金利や住宅ローン金利にどのように影響していくかを考えていきたいと思います。
民間の金融機関が中央銀行に預ける預金金利をマイナスにすることで、資金が中央銀行に滞留するのを回避し、市中に潤沢な資金を供給するのが目的となる金融政策です。2014年に欧州中央銀行(ECB)が導入し、日本でも2016年に日銀が採用し、いずれも現在もマイナス金利政策を採用しています。日本のマイナス金利政策については専用の記事を参照ください(マイナス金利政策が住宅ローンに与える影響と今後について)
日本ではマイナス金利政策の導入で2%の物価上昇を達成、デフレからの脱却を実現させるはずでしたが、目標達成には程遠く、その弊害が目立っていた状況でした。
マイナス金利政策の弊害としては、下記があげられますが、日本でまさに発生している問題といってよいでしょう。
○金融機関の利ザヤが減り、収益が悪化する
○金融機関の金融仲介機能を低下させる
○金利の低下により保険商品や預金などの利回りがほぼゼロになる
○実体経済と乖離した資産価格になる
○ゾンビ企業の延命になり新陳代謝が低下する
アメリカでは新型コロナウイルスの大流行を受け、下記のような財政・金融政策が実施されました。
トランプ政権、FRBが総力を挙げた財政・金融支出を行っており、それでも今回の新型コロナウイルスによる経済へのダメージが甚大で、さらなる政策対応が必要となることは間違いない状況であり、さらなる金融緩和の手段としてマイナス金利政策が話題に上がっている状況です。
アメリカの長期金利はリーマンショック以降低下を続けており、今回の新型コロナショックを受けて、年0.6%前後の水準にまで急落しています。長期金利も引き下げ幅が限られつつある状況です。
現時点でFRBはマイナス金利政策の導入に否定的ですが、政策手段として放棄したわけでもなく、今後も導入に関し多くの議論がされそうです。
ちなみにトランプ大統領は2019年11月ごろから導入を求めており、5月12日に自身のTwitter上で導入を求めています。
財政支出は3月以降合計4回、合計で3兆ドルにも上っている状況です。
年月 | 内容 |
2020年3月6日 | 医薬研究・開発、公共衛生機関支援等を目的とした補正予算を可決、83憶ドルの財政支出 |
3月13日 | トランプ大統領が「国家非常事態」宣言を行う |
3月18日 | 新型コロナウイルス対策法を可決 |
3月27日 | Coronavirus, Aid, Relief and Economic Security (CARES) Actを可決、2兆ドルの財政支出 |
4月23日 | 4800億ドルの新型コロナウイルス対策を可決 |
金融政策についてはリーマンショック時にも踏み込まなかった社債の買取、一般企業への融資などを打ち出し、前例のない規模の金融緩和をしています。
年月 | 内容 |
2020年3月3日 | 緊急で政策金利を0.5%引き下げ(1.00%-1.025%) |
3月15日 | 量的緩和再開と政策金利を1%引き下げを決定(0.00%-0.25%) |
3月23日 | 米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を無制限で買い入れることを決定 |
4月9日 | ジャンク債も資産買取の対象とすること、一般企業への融資を開始 |
5月12日 | ETFを通じ社債の買取を開始 |
2008年のリーマンショック以降も長期金利の下落が止まらず、過去最低金利を更新し続けていたことがわかります。また、この数年の景気回復タイミングでも金利は低下しているのは特筆すべきですね。
米国、欧州、日本の世界の先進国すべてがマイナス金利もしくはゼロ金利という異常事態に陥り、日本だけが先に景気回復に向かい、政策金利も引き上げられると考えるのは難しいでしょう。この数年、米国、欧州は景気が回復基調でしたが、日本ではデフレからの脱却が道半ばでマイナス金利政策からの脱却というゴールすら見えていない状況で、今回の世界的な不況に突入してしまった状況です。
世界各国の中央銀行の幹部からは経済の回復まで数年かかるとの見通しが多く、この期間はマイナス金利政策もしくはゼロ金利政策が維持される可能性が高いでしょう。
アメリカでマイナス金利政策が導入されれば、金融政策の正常化が遠のくこととなるので、日本の金融政策正常化も同様に見通せない状況になるといってよいでしょう。
このため、日本の住宅ローン金利が極めて低い状態にあることが今後数年は続くを考えてよいでしょう。
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