公開日: 2026年9月13日

「リバースモーゲージ」と「リースバック」の違いは、自宅を「担保に借りる」か「売って借りて住む」かにあります。リバースモーゲージは自宅を担保に融資を受け、所有権は自分のまま、返済は死後に自宅を売却して一括で行う仕組み。リースバックは自宅を先に売却して現金を受け取り、買主と賃貸契約を結んで家賃を払いながら住み続ける仕組みです。どちらも住み慣れた家を離れずにまとまった資金を得られますが、所有権・毎月の負担(利息か家賃か)・年齢や収入の審査・相続の扱いが大きく異なります。
少子高齢化が進む日本で、老後資金や介護費用、お子さんへの援助などのために自宅を活用したいご家庭が増えています。ご家族で話し合う材料として、両者の違い・メリット・デメリット、公的な仕組みを使った「リ・バース60」、代表的な商品の最新条件(2026年9月確認)を順に整理します。
「リバースモーゲージ」と「リースバック」のメリットとデメリットを整理する前に「リバースモーゲージ」と「リースバック」の違いを確認していきましょう。
「リバースモーゲージ」と「リースバック」は、自宅を活用して現金・資金を確保すること、また、その自宅には住み続けることができるという点は同じですが、その中身は全く異なっています。簡単にまとめてみました。
リバースモーゲージは、マイホーム(自宅)を担保にしてお金を借りる商品です。お金を借りた後も引き続きその家には住み続けることができ、返済は契約期間終了後(または死後)に、マイホームを売却することで一括で行うので契約期間中に借りたお金を返済する必要がありません。
最終的にマイホームを手放すことになるので子供に家を残すことはできませんが、老後生活の間に住み慣れたマイホームに住み続けながら、生活資金に余裕を持たせたり、高度な医療費に充てたり、子や孫の学費に充てたり・・・と、使途が自由なこともあり、マイホームの価値を有効に活用したい人の支持を集めている商品です。
この仕組み自体は1980年ごろにスタートしていて、長い歴史がありますが日本ではあまり利用されませんでした。この数年、少子高齢化や長寿・高齢化が進行したことで「住まいを有効活用する方法」として注目を集めています。
リースバックは、マイホーム(自宅)を売却してお金を手に入れつつ、売却した後に賃貸契約を結んでそのままその住宅に住み続ける商品です。リバースモーゲージと大きく違うのは、リースバックはマイホーム(自宅)を担保にお金を借りるのではなく、その時点で売却することです。リースバックの場合、その時点で家を売っていることになるので厳密にはマイホームではありませんが、売却前と変わらず住み続けることができるという点は変わりません。
リバースモーゲージは古い歴史がある金融商品ですが、リースバックは2013年に株式会社ハウスドゥ(現・And Doホールディングス)が本格的に手掛けはじめた、比較的新しい仕組みです。現在は不動産会社を中心に、銀行系のグループ会社などさまざまな事業者がリースバックの取り扱いを行っています。利用が広がる一方でトラブルも報告されており、国土交通省が消費者向けに「住宅のリースバックに関するガイドブック」(2022年公表)を出しているほどですので、契約前に条件をしっかり確認することが大切です。
リバースモーゲージとは「家を後で売って一括返済することを約束してお金を借りる」商品で、リースバックは「家をすぐに売ってお金を得て賃貸(リース)契約を結んで住み続ける」商品です。それ以外にも細かなところでも違いがありますので、まとめて比較・確認しておきましょう。
| リバースモーゲージ | リースバック | |
| 概要 | 将来、家を後で売ることを約束してお金を借りる | 家をすぐに売りつつ、賃貸(リース)契約を結んで住み続ける |
| マイホームの所有者 | 本人(変わらない) | 売却先(不動産会社や投資した人) |
| 契約後にかかる費用 | 金利 | 賃料(リース料) |
| 経済条件 | リースバックや任意売却の売却代金より少ない金額しか融資してもらえないことが多い | 通常の売却よりは安い価格になることが多いが、リバースモーゲージで借りられるお金よりは高いことが多い |
| 年齢条件 | 50歳以上が一般的 | なし |
| 同居 | 配偶者しか同居できない(子供は住めない)のが一般的 | 自由 |
| 資金使途 | 原則自由。(投資資金・事業資金は認められない) | 自由 |
| 契約終了後 | 契約終了後(死後)にマイホーム(自宅)を売却して元本・利息を返済する。もし、売却益が出た場合は相続人に分配。 | 住宅の買い戻しが可能 |
| 対象物件 | 基本的には戸建住宅(土地の担保価値が重視される) | 戸建、マンション、工場 |
| 審査 | 年金収入などの審査がある | なし |
| その他 |
契約者の死後、配偶者が改めて審査を受けて借り換えられる商品もある 固定資産税は引き続き支払う必要がある 住宅ローン返済中は利用できない商品が多い(借り換え資金として使える商品もある) |
売却するので固定資産税は不要 住宅ローン返済中でも利用できる
|
※上記は一般的な商品性を比較したものです。取扱金融機関によって商品性は異なります(マンションを対象にできるリバースモーゲージもあります)。
このようにリバースモーゲージとリースバックはマイホームを活用してまとまった資金を得られるという点では同じでも仕組みは全く異なっていることがわかります。
では、それぞれのメリットとデメリットを確認しておきましょう。
| リバースモーゲージ | リースバック | |
| メリット |
・生きている間はマイホームに住み続けられる(商品もある) ・家賃を支払う必要がない |
・所得の審査がない(売却するだけなので) ・マンションなどの集合住宅でも利用可能 ・推定相続人の同意は不要 ・将来、資金的に余裕ができれば買い戻すことも可能 |
| デメリット |
・所得審査があり利用できない場合がある ・固定資産税を支払う必要がある ・マンションなどでは利用できないケースが多い(戸建住宅中心) ・推定相続人の同意が必要(な場合が多い) ・金利上昇・不動産下落リスクが残る |
・通常の任意売却より売却価格が安い ・毎月の家賃が発生する(毎年、売却価格の10%程度)。 ・家賃を支払えなくなった場合住み続けることができない ・名義が自分ではなくなる(厳密にはマイホームではなくなる) |
・高齢者で老後の生活資金を確保したい人
・子供に資産を残す予定がない人
・月々の返済負担を避けたい人
・今すぐまとまった資金が欲しい人
・相続資産を分けやすくしたい人
・家を買い替える計画がある人
近年、利用が広がっているのが、住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用したリバースモーゲージ型住宅ローン「リ・バース60」です。多くの銀行(みずほ銀行やSBI新生銀行など)が取り扱っており、原則満60歳以上の方が対象(金融機関によっては50歳以上から)で、毎月の支払いは利息のみ。元本は契約者が亡くなったときに、自宅の売却または相続人の一括返済で精算します。融資限度額は担保評価額(住宅と土地)の50%または60%(上限1億2,000万円)で、住宅金融支援機構によると申込実績は2025年3月末で累計8,000件を超えています。2025年1月からは全期間固定金利タイプも加わり、変動金利の上昇が心配なご家庭でも支払額を固定して使えるようになりました。
「ノンリコース型」を選べば、自宅の売却代金で元本を返しきれなかった場合でも残った債務を相続人が返済する必要がありません。お子さまに負担を残したくないご家庭に配慮された仕組みで、2025年度の申込件数の約99%がノンリコース型を選んでいます(残債務の免除分は債務免除益として課税対象となる場合があります)。
ただし、リ・バース60の資金使途は住宅の建設・購入、リフォーム、住宅ローンの借り換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金など住まいに関するものに限られ、生活資金には使えません。「老後の生活費のゆとり」が目的なら一般のリバースモーゲージ、「高齢期の住み替えやリフォーム」が目的ならリ・バース60、というように目的で使い分けるのがポイントです。地方公共団体の補助金を使った耐震改修工事なら、機構の利子補給で無利子または低利子になる制度も2025年2月から始まっています。詳しくは住宅金融支援機構「リ・バース60」の公式ページ(2026年9月確認)をご覧ください。仕組みの基本は高齢者向け住宅ローン「リバースモーゲージ」とは?でも解説しています。
リバースモーゲージに力を入れている銀行として真っ先に思いつくのが東京スター銀行です。2005年9月から提供を開始している東京スター銀行のリバースモーゲージの商品名は「充実人生」。利用人数は約1万6,000人(2025年3月31日現在)と、この分野のパイオニアとして業界トップクラスの実績があります。
対象エリアは主に首都圏・関西圏・主要都市で、対象物件は個別相談のうえ判断されます(条件が合えばマンションでも利用可能です)。2026年9月に東京スター銀行の公式ページで確認した主な条件は次のとおりです。契約時年齢55歳以上84歳以下(配偶者がいる場合は配偶者50歳以上)・年金などの年収120万円以上が対象の「利払いあり型」は毎月の支払いが利息のみで、極度額は300万円以上1億円以内と少額から使えるのが特徴です。70歳以上の方向けには毎月の利息支払いがなく利息を借入残高に組み入れる「利払いなし型」もあります。初回の極度貸付利用手数料は165,000円(税込)、2年目以降は担保管理料16,500円/年(税込)がかかり、資金利用ごとの手数料と繰上返済手数料は無料です。契約者が亡くなった後は、相続人の自己資金での返済・自宅の任意売却・代物弁済(売却代金が残高に届かない場合に自宅を引き渡して債務を消滅させる方法)から選べ、残された配偶者が改めて審査を受けて借り換える道もあります。
資金の使い道
東京スター銀行「充実人生」の使用用途ですが、特別細かい制限はなく、契約者本人または配偶者の方の生活にかかる資金であれば何にでも利用することができます。
※事業目的の資金や、投資目的の資金など、生活にかかる資金に該当しない資金使途の場合は、融資の対象外
※新生MyWAYは、現在受付を停止しています。
銀行系のリースバックとしては、SBI新生銀行グループのリース会社である昭和リースが2017年9月から自宅リースバック「新生 My WAY」を取り扱っていましたが、上記のとおり現在は受付を停止しています。
現在リースバックを検討する場合は、リースバックの草分けであるハウスドゥ(現・And Doホールディングス)をはじめとした不動産会社系のサービスが中心となります。売却価格・家賃(リース料)・契約期間(定期借家か普通借家か)・買い戻しの条件は事業者によって大きく異なるため、必ず複数社から見積もりを取り、前述の国土交通省のガイドブックなども参考にしながら、ご家族も交えて慎重に比較検討してください。
A. 多くのリバースモーゲージでは推定相続人(お子さまなど)の同意が求められます。最終的に自宅を売却して返済する仕組みのため、「実家を相続するつもりだったのに知らなかった」というすれ違いが起きやすいからです。契約前に、借入額と自宅の評価額、金利が上がった場合の利息負担、売却後に債務が残った場合の扱い(ノンリコースかどうか)を、家族全員で確認しておくと安心です。
A. リースバックは、売却代金で住宅ローンを完済できるのであれば返済中でも利用できます。リバースモーゲージは住宅ローン返済中は利用できないのが一般的ですが、リ・バース60や東京スター銀行「充実人生」のように住宅ローンの借り換えを資金使途にできる商品もあります。残債がある場合は、その扱いを最初に金融機関へ確認しましょう。
A. 事業者や物件によって異なりますが、一般に売却価格に対して年10%程度の家賃(月額なら売却価格の0.8%前後)が目安とされることが多く、売却価格が高いほど家賃も高くなります。年金収入だけで払い続けられるか、契約が定期借家で更新できない可能性はないかを、契約前に必ず確認してください。夫婦で住宅ローンを組んでいる場合の名義の考え方はペアローンとは?の記事も参考になります。
近年注目を集め利用者が増加傾向にある「リバースモーゲージ」と「リースバック」。
リバースモーゲージ、リースバック共に、自宅を利用した資金調達という面では共通点がありますが、メリット・デメリットが異なるため、それぞれの商品内容と違いをしっかり調べてから利用することが大切です。
老後の資金などまとまった資金を確保する必要がある人は、ご自身の状況にあった商品を選ぶようにしましょう。大切な自宅にかかわる決断ですので、できればご家族と一緒に検討することをおすすめします。各商品の金利・手数料・対象条件は改定されることがあるため、最新の内容は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
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