2018年12月12日
2018年10月10日にJR九州が子会社であるJR九州住宅がJR九州住宅に住宅を注文した顧客にたいして、住宅ローンの申込書類を偽造するように顧客を誘導して、住宅ローンの借入金額を700万円水増した疑惑について、JR九州グループが設置した第三者委員会による調査と今後の再発防止策が公表されました。
目次
JR九州住宅のニュースリリースには以下のように記載されています。
このたび弊社におきまして、宅地分譲契約に基づく建物契約の締結及び施工に絡み、弊社従業員が主導して金融機関へ提出する住宅ローンの融資に関する資料を偽造し、実際の工事請負金額よりも水増しした金額を施主にローン申請させ、金融機関に過剰な融資を行わせた疑い(以下「本件不法行為」という)が判明いたしました。
本件不法行為の疑いを受けて、独立した立場から、本件不法行為を含む同様の事実の有無の確認、また、調査で判明した事実を踏まえた再発防止策等に関する助言を受けることを目的とし、当社の親会社であります九州旅客鉄道株式会社が、2018年10月10日に開催した取締役会において、外部の専門家による「第三者委員会」を設置することを決議いたしました。
JR九州住宅
2008年度以降に住宅ローンの金額を水増しするための不正行為は少なくとも55件あり、営業担当者だけでなく経営陣も認識している組織ぐるみの不正だったことを事実上認めています。
※第三者委員会では当初過去5年の調査を行う計画で始動しましたが不正の実態が明らかになるにつれて5年間に限定する必要性が無いと判断しさらに時期を遡って調査することとしたとのことです。
JR九州
1.顧客はJR九州住宅に2,300円で住宅建築を発注
2.JR九州住宅の営業担当者が顧客に対して、3,000万円で発注したことにするような内容の書類偽装を誘導
3.顧客は偽装書類を利用して金融機関に3,000万円で住宅ローンを申し込み
4.金融機関は顧客に3,000万円の過大融資を実行
5.正規の発注金額をJR九州住宅と顧客で後日清算
今回の疑惑は他の物件と比べて坪単価が高いことに疑念を持った金融機関がJR九州住宅問い合わせしたことを契機に発覚したとのことです。
水増し請求して手に入れた700万円はJR九州住宅の口座にいったん入金され、後日、清算と言う形で顧客に渡されたようです。このような不正水増し融資を不動産会社が主導するのは、「マイホームは建てたいが、手元にお金がない。住宅の建築費用は住宅ローンを借りられるとしても、その他の諸費用関係のお金を用意することができない」などと、不動産の営業段階で、手元資金不足を理由に断られた時が多いと言われています。
ただし、第三者委員会の調査結果では顧客に他の借り入れがあり、一度、顧客が1社の住宅ローンの審査に落ちたこととから先輩に相談して、「他の住宅ローンに申し込むこと」「水増し請求する方法があること」を知ったことが経緯のようです。水増し請求しなくとも顧客は住宅を注文する予定だったようですので、「営業スタッフ」は「他の借り入れがあると聞いた顧客に良い提案をしよう(他の借り入れよりも金利が低い住宅ローンに切り替える)という良心で提案したように感じます。
カードローンや分割払いなどの他の高金利のローンが残っている場合だと、水増ししたお金で金利の高い借り入れを清算することで、低金利の住宅ローンにおまとめするという提案をする不動産会社もあると言われています。
まず、今回の不正行為の責任をとる形でJR九州住宅の取締役の役員報酬を3か月間10%減額、親会社のJR九州の取締役専務執行役員の役員報酬を1か月間10%減額することが発表されました。いずれも本人からの申し出により減額処分となることになったようです。
また、気になる再発防止策ですが、①コンプライアンス教育の徹底、②管理体制の強化(コンプライアンス統括部の設置)、③風通しの良い社内風土の構築、④実効的な監査の実施、⑤人事体制の刷新、⑥取引先との意見交換会の実施の6点を発表しています(詳しくはこちらのPDFファイルに記載されています)。
これだけ話題になったので、さすがに同じ手法による不正行為を行うとは考えにくいので当面は再発しないでしょう。ただ、再発防止策として記載されていることは具体的に書いているのはようで具体的にはかかれていない印象も拭えませんでした。
大きなけん制効果がありそうなのは、コンプライアンスを統括する専門部署の設置、(形骸化させずに)定期的な監査を実施すること、の2つだと思います。
今回のような不正はJR九州住宅だけではなく、全国の不動産会社で頻繁に行われている可能性が高いと思われます。今回の件で、いまだに名のある企業グループの不動産会社でもこのような不正を行っていることが改めて確認できました。住宅ローンの金利は非常に低いので、このような不正は全国で行われている可能性は相当高いでしょう。
この報道を目にして、慌てて対応(社内調査)している不動産会社もあると思います。この報道を知った銀行側が同じような不正行為を自分たちも見逃していないかを調査して、疑わしい案件をヒアリングしてくるかもしれませんからね。
今回の不正行為は金融機関が周辺の物件と比較して、この物件の坪単価が高いことに気づいてヒアリングしたことから発覚しました。
つまり、普段から、不動産会社・工務店が提示した金額を鵜呑みにせずに自分たちでいくらまで融資できるかを事前にチェックしている金融機関であれば、今回の不正行為に気が付くことができる可能性は高かったと言えます。
例えば、SBI新生銀行や楽天銀行は銀行が指定する不動産評価会社による担保評価を行うことにしていますので、SBI新生銀行や楽天銀行はこのような不正行為にひっかかって正当な金額以上を融資することはおそらくなかったでしょう。
つまり、長年に渡って騙され続けた金融機関の審査にも問題があったと言わざるを得ず、今回の件が明るみになったことで、今後、金融機関側の物件担保価値の審査や精査が厳しくなっていく可能性もあるでしょう。
例えば、ネット銀行のauじぶん銀行・楽天銀行・住信SBIネット銀行は、「諸費用を住宅ローンに上乗せして借りることができる住宅ローン」を提供していますので、引っ越し代金まで含んで借りることもできるので、審査に通れば手元資金がほとんどない状態でもマイホームを購入できる可能性があります。
また、フラット35大手のアルヒも、不動産購入・住宅ローン関連の諸費用専用のローン商品や、カードローンなどをおまとめできるローンをフラット35と一緒に利用することができるサービスを提供しています。
このような不正を行う前に金融機関が正式に提供しているサービスを利用できないかを考えるようにしてほしいところです。
仮に今回のような不正行為による水増し融資を行った先で、住宅ローンの延滞や返済遅延行為が多く発生していないのであれば、JR九州のおかげで、銀行は融資の金額も増やせて、返済が遅れることもなく実質的な損害がなかった、と整理することはできると思います。
単純に審査を厳しくして融資を受けにくくしたり、締め付けることはどの銀行でもできます。
逆に、今回の件を発端に、「そこに利用者のお金を借りたいという借り入れニーズがあって、不良債権化させない貸し出せるスキームを作れる可能性を深堀」することで、新商品を開発するなど、より積極的な取り組みを進める銀行が登場することを期待して、今回の不正行為の解説記事を終わりたいと思います。(もちろん、お金を借りたい顧客の足元をみて高金利で貸し出すような商品を期待しているわけではありません。)
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