公開日: 2026年9月19日 更新日: 2026年9月27日

子育て世帯の住宅ローン返済計画は、金融機関が示す「借りられる額」ではなく、「無理なく返せる額」から将来の教育費を差し引いて借入額を決めるのが基本です。
文部科学省の調査では、幼稚園から高校までの15年間にかかる学習費は、すべて公立でも約614万円、すべて私立なら約1,969万円(令和5年度調査)。さらに大学に進学すれば、自宅通学でも年間約180万円、一人暮らしなら年間約234万円の学生生活費がかかります(日本学生支援機構・令和6年度調査)。
住宅ローンは30年、35年、あるいは40年以上にわたって返済が続きます。その間に子どもの進学や受験、塾や習い事といった教育費が増えていき、大学進学の時期には住宅ローンの返済と高額な教育費が重なります。
金融機関から「4,000万円借りられる」と言われても、この重なる時期を乗り越えられるかどうかは別の話です。子どもの教育費を織り込んだ無理のない返済計画は、最新の統計で教育費の目安をつかみ、ピークの時期と家計を照らし合わせることから始まります。これから子どもを考えている方も、子育て中の方もぜひ参考にしてください。
住宅ローンを申し込むと、金融機関は年収や勤務先・勤続年数・住宅ローン以外の借入状況などをもとに、いくらまで融資できるかを審査します。ただ、金融機関が貸してくれる(貸せる)金額と、家計に無理なく返済できる金額は必ずしも同じではありません。
返済できる金額を借りるというのは子どもがいない場合でも同じですが、子どもがいる場合、または今後子どもを持ちたいと考えている場合は、返済できるかどうかに加えて「教育費」の問題が出てきます。
現在は子どもがまだ小さくて教育費がそれほどかからない家庭でも、10年後、15年後には中学受験や高校受験などで環境が大きく変わってくるものです。
例えば、子どもが成長した際には具体的に次のような支出が増えていきます。
これらの支出はどれも高額となるため、子育て世帯が住宅ローンを組む際には、現在の家計だけではなく、子どもが幼稚園・保育園から大学生になる頃の家計まで想定して考えることが重要です。
教育費は、子どもが公立と私立のどちらに進学するか、また親が子どもに何をさせたいかによって大きく異なってきます。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」(令和8年1月に公表数値が訂正された最新版)によると、子ども1人あたりの年間学習費総額は以下の通りです。
| 令和5年度 子供の学習費調査(文部科学省) | ||
| 学 校 | 公 立 | 私 立 |
| 幼稚園 | 約18.5万円 | 約34.7万円 |
| 小学校 | 約36.7万円 | 約174.2万円 |
| 中学校 | 約54.2万円 | 約156.0万円 |
| 高 校 | 約59.7万円 | 約117.9万円 |
※学習費総額には、学校教育費だけではなく、給食費や学校外活動費(塾・習い事など)も含まれます。高校は全日制の数値です。出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」結果の概要(令和8年1月16日訂正版)
この調査をもとに、幼稚園(3歳)から高校卒業までの15年間をすべて公立に進学した場合の学習費総額は、文部科学省の集計で以下のようになっています。
| すべて公立に進学した場合の教育費 | |
| 幼稚園(3年間) | 約53万円 |
| 小学校(6年間) | 約220万円 |
| 中学校(3年間) | 約163万円 |
| 高 校(3年間) | 約178万円 |
これらの教育費を合計すると、約614万円となります(各学年の平均年額を単純合計した文部科学省の数値)。
一方で、幼稚園から高校まで私立に進学した場合も見てみましょう。
同じように計算すると、教育費は合計で約1,969万円に達します。すべて公立に進学した場合と比べると、3倍以上かかる計算です。
もちろん、実際はすべての家庭がこのような極端なケースになるわけではありません。
しかし、公立か私立かによって子ども1人あたりの教育費が1,000万円以上変わる可能性があることは覚えておきましょう。
教育費のなかでも、特に家計への負担が大きくなりやすいのが大学・短期大学・専門学校へ進学する時です。
先ほどは幼稚園・保育園から高校生までの教育費でしたが、子どもが大学への進学を希望している場合はさらに教育費がかかります。近年は就職を考えて大学に進学する風潮もありますので、教育費を考える際は必ず大学進学までを想定してシミュレーションしたいところです。
奨学金制度で知られる日本学生支援機構(JASSO)の「令和6年度学生生活調査」によると、大学学部(昼間部)の年間の学生生活費(学費+生活費)は、自宅通学か自宅外通学かによって大きな差があります。
この調査は2年ごとに行われており、前回(令和4年度)と比べて学生生活費の平均は10.7%増えています。物価の上昇が学生の生活にも及んでいることが分かります。
| 大学(昼間部)の年間学生生活費(令和6年度) | |
| 自宅から通学 | 約180万円/年 |
| 下宿・アパート等から通学 | 約234万円/年 |
※国公私立の平均。学費(授業料・学校納付金・通学費など)と生活費(食費・住居光熱費など)の合計です。出典:日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査」(令和8年3月公表)
これを踏まえて4年間の大学生活費用を単純計算すると、以下のようになります。
| 大学(昼間部)の学生生活費(4年間) | |
| 自宅から通学 | 約721万円 |
| 下宿・アパート等から通学 | 約937万円 |
こうして比較すると、自宅から通学する場合と一人暮らしをする場合とでは、4年間で200万円以上の差があることが分かります。
ただし、これはあくまで国公私立を含む平均であり、子どもが希望する大学や学部、地域、住む住居の形態などによって実際の費用は大きく異なります。私立大学のアパート通学では年間約269万円と、平均を大きく上回ります。
特に、地方から首都圏や都市部の大学へ進学する場合は、住居探しや帰省の交通費なども加わります。オートロックや女性専用アパートなど安全を考慮した物件を選ぶ場合は、さらに生活費がかかることも覚えておきたいところです。
子育てをするうえで教育費は必要不可欠なもので、簡単に削ることができない費用です。
それを踏まえたうえで、子育て世帯が住宅ローンを組む際に注意したいのは、教育費のピークと住宅ローン返済が重なる時期です。
例えば35歳で住宅ローンを組み、子どもが5歳だったとします。35年ローンを組んだ場合、住宅ローン返済年数に応じた子どもの年齢は次のようになります。
| 親の年齢 | 子どもの年齢 | 子どもの生活の変化・イベント |
| 35歳 | 5歳 | 住宅ローン開始(35年ローン) |
| 42歳 | 12歳 | 中学受験などの進学準備 |
| 45歳 | 15歳 | 高校受験などの進学準備 |
| 48歳 | 18歳 | 大学などの進学準備 |
| 50歳前半 | 20歳前半 | 大学卒業・就職活動 |
| 70歳 | 40歳 | 住宅ローン完済 |
上記の表を見ると分かる通り、住宅ローンを組んでから10年~20年程度経過した頃に、子どもの進学・卒業といったイベントが立て続けに起きます。住宅ローンの返済を続けながら、大学の入学金や授業料を支払わなければいけない状況が発生するのです。
この重なるタイミングを考慮せず、現在の収入だけを基準に住宅ローンを組むと、10年・20年先に教育費との両立が厳しくなり、家計が苦しくなるかもしれません。
さらに、住宅ローンと教育費を考えるうえで子どもの人数と年齢も重要となってきます。
当然、子どもの人数が多い家庭ほど教育費は人数分だけかかるため、貯蓄をしてより余裕を残していく必要があります。
ただ、子どもが複数人いる場合は、単純に「子どもが2人なら教育費も倍になる」と考えるだけでは返済計画として不十分です。
例えば、子どもが2人いて年齢差が2歳の場合、中学校・高校・大学の入学と進学の時期が重なる可能性があります。2人が同時に大学に通う年は、自宅通学でも年間約360万円(約180万円×2人)の学生生活費が一気に必要になる計算です。
一方で、年齢差が5歳以上ある場合は教育費のピークがある程度分散される傾向にあります。
このように、返済計画を立てる際は、子どもの人数だけでなく進学などの節目の重なりにも注目して借入金額を設定するようにしましょう。
これから住宅ローンを検討している人の中には、「将来の子どもの教育費が心配なら、住宅ローンの借入額をできるだけ少なくしたほうがいいのでは?」と考える人もいるでしょう。
しかし、住宅をなるべく自己資金で購入しようと無理をすれば、当たり前ではありますが支払った分だけ手元の貯蓄が減っていきます。
手元の貯蓄が少ないと、急な出費が発生した際に対応できず、結果的に教育だけでなく生活自体が苦しくなる可能性が出てきてしまいます。
そう考えると、頭金を多く入れたり貯蓄を住宅購入費に充てたりして住宅ローンの借入額を抑えることは、それほど良い方法とは言えません。
きちんと返済計画を立てたうえで住宅ローンを利用し、万が一に備えて手元にある程度資金を残しておくほうが、長く生活するうえでは重要といってもいいでしょう。
特に子どもがいる家庭では、住宅購入後も教育費を積み立て続ける必要があります。
住宅購入の際には、住宅ローン残高だけでなく「購入後にどれだけ貯蓄を残せるか」も考慮して、自己資金からどのくらい支払いをするか決めたいところです。
近年では、35年を超える「超長期住宅ローン」を取り扱う金融機関も増えています。
同じ借入金額であっても、返済期間を40年・50年と長くすると毎月の返済額を抑えられます。「子どもが大学生になるまでの20年間は住宅ローン返済額を抑えつつ教育費を確保し、大学卒業後など教育費が落ち着いたら繰上返済をする」という考え方も可能になってきているというわけです。
ただし、超長期の住宅ローンには注意点もあります。
【40年・50年住宅ローンの注意点】
金利上昇については、2026年9月18日に日本銀行が政策金利(無担保コールレート翌日物)を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げることを決定しました(新しい方針の適用は9月24日から)。日銀の公表文では、今後も経済・物価・金融情勢に応じて政策金利を引き上げていく方針が示されています。
変動金利型で長く借りる場合、政策金利の引き上げは短期プライムレート・各銀行の基準金利を経て適用金利に反映されるため、実際の返済額が変わるまでには時間差があります。多くの銀行が採用する「5年ルール」がある契約では、金利が上がっても毎月の返済額は5年ごとの見直しまで変わらず、そのぶん元金の減りが遅くなります。
つまり、「利上げがあってもすぐに返済額が増えるわけではない」一方で、「金利が上がった分は見えないところで負担が増えている」ということです。教育費のピークが来る10~15年後の金利は誰にも分かりませんので、金利が1%上がった場合の返済額でも家計が回るか、あらかじめ試算しておくと安心です。
長期型の住宅ローンでは、教育費が大きくなる時期に毎月の返済額を抑えながら、将来的には住宅ローン残高を減らしていく計画を立てるのが重要です。単純に「返済期間を長くすれば安心」というわけではありませんので、自分たちの将来設計に合っているかどうか吟味したうえで申し込みましょう。
子どもがいる世帯の場合、住宅ローン商品によっては「子育て世帯向けの金利引下げ制度」を利用できるケースがあります。
例えば、住宅金融支援機構の「フラット35」には、「【フラット35】子育てプラス」という制度があります。子育て世帯(借入申込年度の4月1日時点で18歳未満の子どもがいる世帯)や若年夫婦世帯(夫婦のいずれかが40歳未満)を対象に、子どもの人数などに応じて当初一定期間の借入金利を引き下げる仕組みです。
2026年9月時点の公式案内では、子ども1人(または若年夫婦世帯)で当初5年間年▲0.25%、子ども2人で年▲0.50%、子ども3人で年▲0.75%と、人数に応じてポイントが加算されます。住宅性能(ZEHや長期優良住宅など)のポイントと組み合わせると、引下げ幅や期間がさらに広がります。
また、2026年3月からは新規の借入だけでなく、【フラット35】借換融資でも子育てプラスが利用できるようになりました。変動金利で借りていて全期間固定へ切り替えたい子育て世帯にとって、選択肢が一つ増えたといえます(出典:住宅金融支援機構【フラット35】子育てプラス)。
民間銀行にも、子育て世帯を支える独自の仕組みがあります。例えば武蔵野銀行の住宅ローンには、産休・育休期間中に子ども1人あたり最長2年間、元金の返済を据え置ける「産休・育休特例」があります(利息の支払いは継続。詳しくは武蔵野銀行「産休・育休特例」の解説記事をご覧ください)。
子どもがいる世帯でこれから住宅購入を考えているという方は、こういった子育て世帯向けの制度を金融機関が実施しているかどうかチェックしたいところです。
ただし、子育てプラスには予算があり、予算に達する見込みになると受付が終了します。適用条件や実際の金利は申込時期や利用する金融機関によって異なるため、住宅ローンを申し込む際には必ず最新の条件を公式サイトでご確認ください。
住宅ローンを組む前には、現在の家計だけではなく、今後20年程度の家計を簡単にシミュレーションしてみることをおすすめします。
特に確認したいのは、次の5つです。
子どもの人数によって、将来必要になる教育費は大きく変わります。
現在子どもが1人であっても、今後2人目・3人目と人数が増えていく可能性も含めて住宅ローンを検討しましょう。
上記でも説明した通り、子ども同士の入学・進学時期が重なると、一時的に教育費が大幅に増える可能性があります。
子ども同士の年齢差を計算して、住宅ローン返済と複数人分の大学費用が重なると分かった場合は、双方の学費と住宅ローンを計画的に支払えるかどうかシミュレーション等で確認しておきましょう。
子どもの進学先をすべて公立で考えるか、中学から私立も選択肢に入れるのかによって、必要な教育資金は大きく変わってきます。
もちろん、最初から子どもの進路を決める必要はありませんが、たとえ公立・私立どちらになったとしても無理なく返済できるように、余裕を持った資金計画を立てることが大切です。
地方在住の家庭などでは、大学進学を機に子どもが都市部で一人暮らしを始める可能性があります。
この場合、学費だけではなく、家賃や生活費なども必要になりますので、大学費用を考える際は「学費だけ」で計算しないよう注意しましょう。
最も重要なのが、「子どもが大学生になった時に住宅ローン返済と教育費を両方支払えるか?」という点です。
現在の家計では問題なくても、15年後、20年後と教育費がピークに達するタイミングになると、家計が厳しくなる可能性があります。
そういったことがないように、保育園・幼稚園の入園から大学の進学・卒業まで、教育費が多く必要となる時期に自分たちは何歳だろう?と考えておくと、その時期が来た際に焦らずに済みます。
住宅ローンを利用するうえで、将来にわたる子どもの教育費の確保は欠かすことができないポイントです。
そのため、教育費を考慮しながら住宅ローン計画を立てる際には、次のように考えておくのが有効です。
まず、住宅ローンを利用する際は、金融機関が提示する借入可能額いっぱいまで借りるのではなく、将来的に予想される教育費や貯蓄を考慮して借入額を決めます。
また、ボーナスを利用して住宅ローンを返済したり、住宅ローンを早く返済したいために繰上返済を急いだりしてしまう人もいるかと思います。
早く返済したいという気持ちは悪いことではないのですが、ボーナスも毎年同じ額が支給されるわけではありません。教育費は毎年決まった額のほか、入学時などにまとまった支出が必要になることもあります。そういったタイミングでは、繰上返済よりも手元資金を確保する方が重要です。
一度繰上返済した分の資金は、当然教育費に戻すことはできません。繰上返済は「教育費の見通しが立ってから、余裕資金の範囲で」が基本です。SBI新生銀行のように一部繰上返済が1円から手数料0円で何度でもできる銀行なら、進学の節目ごとに少額ずつ返していく使い方もしやすくなります。
特に、大学進学などを考えているのであれば、進学直前になってから教育資金を準備するのではなく、子どもが小さいうちから計画的に積み立てておくことで将来の負担を軽減できます。
そして見落としがちなのが、契約者に万一のことがあった場合の備えです。団体信用生命保険(団信)で住宅ローンの残債がなくなっても、子どもの教育費や日々の生活費はそのまま残ります。がんや就業不能を保障する団信を選ぶか、別の保険で備えるか、家族の暮らしを守る視点で考えておきましょう。詳しくは住宅ローン返済中の家族の備え方(がんの5年生存率と団信)で解説しています。
A. 文部科学省の調査では幼稚園から高校まですべて公立で1人約614万円、大学は自宅通学で4年間約721万円が目安です。2人なら単純計算で公立・自宅通学でも約2,670万円になります。私立や一人暮らしを想定する場合はさらに上振れするため、進路の幅を持たせて見積もりましょう。
A. 借入時に返済期間を長めに設定して毎月の返済額を抑え、教育費が落ち着いてから繰上返済で期間を短くする方法があります。また、産休・育休中の元金据置に対応する銀行もあります。返済中の条件変更は金融機関ごとに扱いが異なるため、早めに借入先へ相談してください。
A. 使えます。借入申込年度の4月1日時点で18歳未満の子ども(胎児を含む)が1人いれば、当初5年間年▲0.25%の引下げが受けられます(2026年9月時点の公式案内)。子どもがいなくても夫婦のいずれかが40歳未満なら若年夫婦世帯として同じ引下げの対象です。
A. すぐには増えないのが一般的です。政策金利の引き上げが各銀行の基準金利や適用金利に反映されるまでには時間差があり、5年ルールのある契約では毎月の返済額は見直し時期まで変わりません。ただし利息の割合が増えて元金の減りは遅くなるため、返済予定表と契約書で自分の見直し時期を確認しておきましょう。
住宅ローンは、住宅を購入する時点の収入だけで考えるものではありません。
特に子どもがいる家庭では、将来発生する教育費を考慮して、長期的な返済計画を立てる必要があります。
ポイントをまとめると、次のとおりです。
住宅ローンは、一度契約すると長期間にわたって家計に影響します。
だからこそ、「今の収入ならいくら借りられるか」だけではなく、子どもが高校生・大学生になったときでも無理なく返済を続けられるかという視点を持つことが大切です。
マイホーム購入と子どもの教育、どちらも家族にとって重要なライフイベントです。
住宅ローンを検討する際には、教育費を含めた長期的な家計シミュレーションを行い、自分たちの家庭に合った無理のない借入額を決めるようにしましょう。
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